❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第9章 龍は一寸にして昇天の気あり
「って言っても、いつお前の御父上がここを探れるかは分からない。誰かが売られる前に……一か八か、やってみる価値はあるかもしれないな」
「うん!………とき、なにする?」
「あれだけ気合い入れて皆を煽ってたくせに、考えなしだったのかよ……」
「むむむ……」
気合いだけはどうやら一丁前だったが、やはり子供は子供であった。光鴇が首をこてんと傾げて見せれば、少年が呆れたように笑った。そうしてひとまず作戦を考える為、子供達が集まっている火鉢の傍へと光鴇を連れて混ざる。
「いいか?ここの扉は閂かんぬきで鍵がかけられてる。つまり、内側からは開けられない。となれば、あいつらに扉を開けさせる必要がある」
「ふむふむ」
「例えば火事だ!とか、あいつらが扉を開けざるを得ない状況とかを作るのが手っ取り早いけど……」
「き、もやす?」
「本当に燃やしたら万が一の場合、全員丸焼きになるぞ。もっと切迫するような……お前、あいつらに自分が明智光秀の子供だって言ったのか?」
「ううん。でもとき、かねづるっていってた。ときはときなのに」
金づるの意味を理解していない光鴇が、ぷくっと頬を膨らませて不服な顔を浮かべた。しかし少年はその一言を耳にして、何かを察した様子で口角を持ち上げる。
「よし、なら扉を開けさせる理由はお前で決まりだ。確かにこの身なりに顔立ちなら、高値がつくって考えてもおかしくない」
「……?」
「お前の具合が悪くなったとか何とか騒いで、あいつらをおびき出す。扉を開けたところで、後は様子見に来た一人をどうするか……この倉庫には木片とか食えるかも分からない木の実とか、そんなのしかないからな……取り敢えずくくり罠でも作っておくか」
「くくりわなってなに?」
「猪とか鹿とか、獲物を捕まえる時に仕掛ける罠の事だよ。俺、罠師の跡取りに引き取られたって言っただろ?養父さんから一通り罠の作り方と仕掛け方は教わったんだ。その麻袋、貸してみろ」