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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



彼方がそう言うのも無理はない。光秀同様、武将達と佐助はものの見事に浴衣を着こなしていた。秀吉は天鵞絨色(びろうどいろ)の浴衣に山吹色の帯、三成は藤色の浴衣に薄灰色の帯、上には袖を通す形で白梅鼠色の羽織を羽織っている。家康は金茶色の浴衣に淡黄色(たんこういろ)の羽織へ袖を通し、蜂蜜色の帯を締め、佐助は薄緑色の浴衣に千歳緑色の帯姿で、そこに光秀の姿が加われば、完全なるイケメン戦国武将(現代版)の図の完成である。

「何か…あの人達と外歩くの嫌じゃない?」
「分かる……視線が怖そう、色んな意味で」

少し離れた場所から見ても、きらきらと輝かんばかりのイケメンオーラをまとっている男性陣を見て、女性二人はひそひそと言葉を交わし合った。あくまでも二人の主観ではあるが、この世は乱世よりも女性の反応が顕著だ。そんな中、京都の町に突如としてイケメン(武将)が現れたならどうなるのか、そんなものは想像するまでもない。きっと和服男子好きの女性陣や修学旅行生などに囲まれ、黄色い歓声を上げられるに違いないだろう。そんな確信めいた予感が、凪と彼方の脳裏へ同時に過ぎった。

「凪、あんたの彼氏、歩くどころか立ってるだけで凄い色気発してるんだから、ちゃんと掴まえとかなきゃだよ」
「う、うん…!」
「その心配には及ばない」

彼方が凪の肩へ片手をぽん、と励ますよう置いて告げる。言っている意味は十分に理解出来るし、想像も出来るので、おもむろに小さく頷いた彼女であったが、すぐに背後からしっとりとした声が聞こえて来て、凪の腹部に片腕が回る。くい、と優しく引き寄せられると、背に暖かなぬくもりが触れた。

「光秀さん…!?」
「生憎と、凪だけで既に両手が塞がっているのでな」
「………ま、明智さんの様子からして、他の女の影を心配するだけ無駄って感じはするけどね」
「理解頂けたようで何よりだ」

軽く背後を振り返っていた凪の片手をするりと絡め取り、悠然と笑みを浮かべる。他の女など一切目に入らないと言わんばかりの様は、本人の言う通り色んな意味で手一杯といったところだろう。

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