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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



先刻までかなり切羽詰まっていた顔をしていた光鴇も今やすっきりとした表情であり、凪と手を繋ぎながら真っ白な雪道に大小大きさの異なる足跡を二人で刻んでいる。

「こっちのおてて、つめたい」
「宿に戻ったら温かい温泉に入れるよ。楽しみだね」
「とき、ちちうえにかみ、あらってもらう!」

少し赤くなった小さな手へ凪がはあ、と息を吹きかけると幼子が嬉しそうに笑った。小さな子供の歩みに合わせてのんびり歩いていると、不意に何処かから子供の泣き声が聞こえて来る。

「わああああん!」
「ははうえ、だれかないてる!」
「多分集落の子だよね。ちょっと行ってみようか」
「うん、とき、いいこいいこしてあげるね」

凪と光鴇がいる場所から然程離れていない距離感から聞こえて来るそれに、二人が顔を見合わせて足を向けた。広い間隔をあけて家屋同士が並ぶその影に、おそらく光鴇と同い年かそれよりひとつ幼いと思われる幼子がいる。男子(おのこ)と思わしき子供は、雪の上へ座り込みながら両膝を立てて泣いていた。子供の傍には雪から半分程剥き出しになった大きめな石があり、そこへ躓いた事が状況から見て取れる。

「大丈夫?何処か痛むの?」
「ううっ……あし、いたい……おっかあ……!!わあああん!!」
「いいこいいこ。いたいいたい、とんでけー!」
「わああああん!!!」
「!?いたいいたい、とんでかない……」

凪と光鴇が泣いている子供の傍へ寄った。怖がらせないよう両膝をついた凪の横に立った光鴇が、泣きじゃくる幼い子供の頭を撫でてとんでけのまじないをかけてやる。しかしそれに反し、更に泣きじゃくる子供の様子に光鴇がぎょっと目を丸くし、信じられないと言わんばかりの表情を浮かべた。

心根の優しい光鴇の頭を凪がひと撫でした後、子供の粗雑な着物をそっとめくり上げる。小さな膝小僧には転んだ際、傍にある剥き出しの石で擦ってしまったのか、軽い擦り傷が出来ていた。

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