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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



そんな中で一種、異彩を放つ植物を目にし、凪が眸をきらきらと輝かせる。

「ははうえ、ふうとうかずらってなに?たべれる?」
「風藤葛(ふうとうかずら)はどっちかって言うと牛さんとかのご飯になったりするかな。後はお薬にも使えるんだよ。石菖(せきしょう)や榕(あこう)と一緒に薬湯にして飲んだり……毒とか傷にも使える万能な薬草なの。でも生で食べちゃ駄目だからね?」
「ほう?中々に珍妙な見た目だが、薬効は確かという事か」
「ふうとうかずら、すごい!」
「薬草問屋でも見た事ありませんし、きっと稀少な薬草なんですね」
「うん、日ノ本でも西にしか分布しない植物でね、ちょうど今頃の時期になると実が赤く熟すの」

薬草関係の事になるとうっかり饒舌になる凪の楽しそうな解説を耳にし、光秀が口元を綻ばせた。薬学に関心のある光臣が好奇心を覗かせて風藤葛を眺める傍らで、意味は然程分かっていないだろうが光鴇も楽しそうに跳ねる。一方、凪の博識ぶりに驚いた行商の男が目をまん丸にし、彼女を見つめた。そうして感嘆と共に手をぱちん、と打ち鳴らす。

「いやあ、驚きましたよ奥方様……!薬草にお詳しいんですねえ」
「あ、いえ……趣味と実益を兼ねてるようなものなので」
「ときのははうえ、おくすりのこと、いっぱいしってる!」
「それだけ薬学の知識がおありとは素晴らしい。ではこちらも御存知ですか?」

男から手放しで称賛されると、凪が出しゃばり過ぎたかな、と内心肩を竦めて苦笑した。自身の母を褒められた事に光鴇が得意げな顔をすると、行商人は別の薬草を彼女へ見せる。

「これは弟切草(おとぎりそう)ですね。止血薬として凄く優秀な生薬です」
「素晴らしい!ではこちらの弟切草と風藤葛を合わせて三百文で如何ですか?」
「弟切草はともかく、風藤葛とやらはそれ程価値のある薬草なのか」
「さんびゃくもん……ときのおとしだま、たりない……」
「お前が父上達から貰ったお年玉は十五文だったからな。しかし、稀少な薬草は元々高値がつきやすいとはいえ、少々吹っ掛け過ぎでは……?」

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