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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



既に子供達は各々の文机に着席し、自身の両親が後方の木戸から入って来るのをそわそわしながら待っている事だろう。その辺りは現代の参観日とあまり変わらないなと考えながら、凪が頬を緩めた。

そうして辿り着いた先、光秀が光鴇のいる組の木戸をからりと開けた瞬間、室内からは一斉に数多の眼差しが向けられる。それは例えば自身の親だろうかと期待を寄せる子供のものであったり、既に来ている他の子供達の親であったり────この場合、主に後者が多いのは光臣の頃から変わらず、凪自身もいい加減耐性がついたというものだ。

「明智光秀……」
「明智殿と奥方様にその嫡男か」
「凪様がいらっしゃるとは……!」
「光臣様!素敵……!!」

(光秀さんと私はまあ賛否って感じだけど、臣くんのファンは着実に増えてるなあ……さすが光秀さんのDNA……!!)

本人のやり方も相俟って、光秀が気に入らないと考える者も未だ安土には一定数はいる。かと思えば、さすがに安土城を信長から託された秀吉の参謀役という事もあり、一目置いている者も年々増えつつあった。凪自身はさておきとして、光秀に次いで注目を受けるのが自慢の長子、光臣である。

明智家の跡取りの座は確実、と重臣達からは太鼓判を押され、成績優秀文武両道、更には父親譲りのこの美貌。年頃の娘達が放っておく訳がない。現代の参観日とは異なり、一家で見学に来る事も多いのがこの学問所の公開手習いの特徴でもある。

きらきらと熱っぽい眼差しを娘達から幾つも注がれるも、光臣はまるで気にしていないと素知らぬ顔だ。その他者へ然程関心のない雰囲気がまた光秀に似ている、と凪が内心でそっと苦笑を零す。

「おや、仔栗鼠がこちらに気付いたようだ」
「おそらくあの様子だと、人の出入りがある度に見ていたのでしょうね」
「本当だ。ふふ、可愛い」

光秀の声を耳にして意識を向けると教室の中央辺り、前から二列目の席に光鴇の姿があった。

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