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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



「おや、随分な意気込みようだ」
「子供を育てるって、当たり前だけど責任重大ですから!光秀さんは、あんまり心配とかなさそうな感じですね……?」
「当然だろう」

改めて親として恥ずかしくない人間でいよう。そう気合いを入れた凪が首を傾げると、光秀が吐息を零すように短く相槌を打ち、互いの額をこつりと合わせて視線を間近で交わし合う。

「俺とお前の子らだからな」
「!」

自信に満ちたその声には、溢れんばかりの愛情が込められていた。二人が愛を交わした中で生まれた、ふたつの命。本来ならば交わる事のなかった二人。その血が混ざり合った末に生まれた、奇跡の愛し子達の未来は数多の希望に満ちている。

自然と笑顔を咲かせた凪が、嬉しそうに頷く。それを目にして光秀もまた、愛しい妻へ愛を注ぐように口付けたのだった。


─────────────…


翌日、穏やかな冬晴れが広がる空の下、公開手習いへ家族揃って来てくれると知った光鴇は、光忠と共にご機嫌な様子で学問所へと出掛けていった。かつては光臣も通っていた学問所は、光秀が丹波亀山へ建てた学舎(まなびや)を元に安土でも建設されたものだ。寺の敷地内へと作られたそこは存外広く、安土城下町へ住まう者であるなら、身分を問わず通う事が出来る。

教わる内容は文字の読み書きと軽い算術が中心であり、時には教師役でもある寺の住職から説法を聞かされたりなどという事もあった。寺には子息を通わせた武家から書物の寄贈が多くある為、手続きを踏めば学問所に通う子供達だけでなく、大人達も書物を借りる事が可能だ。

そんな学問所で催される事となった公開手習いだが、言い出したのは無論凪である。きっかけは長子、光臣を学問所へ通わせていた際、どのように勉学へ励んでいるのか見たい!と言い出した事にあった。いつの世も親とは子が自身らから離れている際に、どう過ごしているのか気になるものだ。

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