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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



親は、道を示してやる事は出来るが、そこから先へ進んで行くのは他ならぬ子供達自身だ。基礎を楽しんでいる内は、それだけでも構わない。何が必要で何が足りないのか、それに気付いた時におそらく次の道へ足を踏み出すのだろう。それはもしかしたら戦う、という方向性ではないのかもしれないが、身を守る術が刀を握る事だけでない事実は、光秀自身も理解している。

「次の道って、例えばどんな……?」
「逃げ足を鍛えるも良し、弁舌を鍛えるも良しといったところだ」
「弁舌……光秀さんみたいに?」
「存外意外な才が見い出されるかもしれないぞ」
「そこは鴇くんより臣くんの方が近い気がしますけど。鴇くんはどっちかっていうと……逃げ足ですね」
「小動物の真骨頂だな」

光鴇が光秀のように口達者になっている姿を想像して、凪が困ったように笑った。どちらかと言えば舌を武器にするのは、頭の回転が速い光臣に適している。けれど、小さな身体を活かしてちょこまかと御殿中を飛び回っている光鴇ならば、確かに逃げ足は速そうだ。

光秀は、きっかけを与える事はするし、望むならば自らの持てる技を惜しみなく教えてくれるだろう。しかし、その後はあくまでも自主性を重んじる事を選んだ。

安堵で肩の力を無意識下に抜いた凪が、吐息を零した。そうして二人で可笑しそうにくすくすと笑い合った後、光秀が片手で凪の頬を優しく撫でる。

「子らがこれから先、生きる刻は長い。二人が何を選び取るのか、ゆっくり見守って行くとしよう」
「……そうですね。その為にも、私達がちゃんと色んな事のお手本にならなきゃ!」

焦らずとも、子供達は子供達なりの速度で歩んで行けばいい。しばらくはその道の前を、光秀と凪が歩く事になる。ならば、自然とその背を見て学んでいく事だろう。改めて母としてしっかりしなければ、と息巻く凪を前に、光秀が目元を優しく和らげる。

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