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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第9章 龍は一寸にして昇天の気あり



最初こそある程度の間隔をあけていたものが、次第に間髪入れず右から、左からと衝撃がやって来ると、必死に両手両足で踏ん張っていた光鴇の身体が体勢を崩し始めて、しまいに再びどさっと盛大に転がってしまう。

(だ、大丈夫なのかな……!!!?)

光臣がまだ光鴇と同じくらいの歳の頃も、こんな風にはらはらとした気持ちで稽古を見守ったものだが、何度目の当たりにしても慣れるものではない。光秀の事は信頼しているし、本当の意味で子供達へ酷い怪我をさせるつもりがない事は重々承知しているのだが────如何せん、光秀は元々とてつもなくスパルタなのである。

「わあっ……!?」
「端から身構えていると余計な力が入り、体勢を崩しやすくなる。俺が振るう刀の動きをよく見定める事だ。どちらから振られるかを、その小さなおつむで考えてみるといい」
「おつむ、ちいさい、ない。とき、まけない!」
「ほう?それは楽しみだな」

くす、と小さく挑発的な笑みをひとつ落として光秀が金色の双眸を眇めた。転がされる痛みはあるものの、光鴇の負けん気へ少しずつ火がつき出したのを認めて光秀が笑みを深める。良くも悪くも光秀は子供達の性格を把握していた。故に、どのように煽れば相手が本気になるのかなど、とうに熟知しているという訳だ。立ち上がった光鴇の大きな眸に、意地という名の感情を見て取り、光秀が再び刀の鞘を振る。

「あいつ、中々呑み込みが速いな。臣の時も思ったが、剣の才は父親譲りか」
「まだ少しふらついていますが、父上の攻撃に対応し始めていますね……!」
「本当だ!さっきより全然転ばなくなってる。でも、どうして……?」

暫し状況を静観していると、政宗が不意に感心した様子で隻眼を瞠った。光臣の時も稽古を何度か覗いた事がある政宗が言うのだから、おそらくそうなのだろう。自分のDNA要素がいまいち薄い事が若干寂しく感じるものの、才があると言われて嬉しくない親などいない。光臣が安堵した様子で声を弾ませたのを聞き、凪も稽古へ意識を戻した。

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