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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第8章 水魚の交わり



光秀の物言いに不思議そうな表情のまま首を傾げると、男が鷹揚に肯定を示す。

「押し花とやらは中々に珍しい品だった。まさか花を平たくして形を保つとは」
「もう少し平たい花ならもっと綺麗に形を残せたんですけどね。栞……じゃなくて、挟み紙として使ってもらえたらいいなと思って、作ってみたんです。それだったら遠方に行っても持ち運びに邪魔じゃないかなと思って」
「大事に使わせてもらうとしよう。とはいえ、花言葉とやらが【秘密】とは少々頂けないな」

凪から贈られた押し花のしおりは、硯箱の中に収めてある。文箱に入れる事も考えたが、凪がそれを贈ってくれた意図を思えば、移動の際にも持ち運ぶものへ収めた方がいいという判断故だ。真っ白な穢れなき白の花を、彼女は光秀のようだと言うけれど、光秀にとっては彼女の方が余程似合うように思えた。ただし、花言葉を除いては、だが。敢えて冗談っぽく光秀が笑ってみせると、凪が慌てて目を丸くする。

「えっ!?だ、駄目でした?なんか光秀さんぽいかなって思ったんですけど……」
「お前には本心を出来るだけ伝えるようにしているつもりだが、どうやら足りなかったらしい」
「そ、そういうつもりじゃ……!でも、実際ちょっと秘密主義だったりするじゃないですか」

光秀は秘密が多い。それは凪でなくとも、光秀を知る者ならば誰しもが知っている事だ。否定はしないままで笑みを深め、わざと囁きかけるよう告げる。

「ならば、お前だけに俺の秘密をひとつだけ明かすとしよう」
「!?教えてください……!」

自ら秘密を明かす事など、滅多にしない男の物言いに彼女が些か身を乗り出すようにして問うた。好奇心と嬉しさと、様々な生き生きとした感情が凪の大きな眸を輝かせている様を見やり、光秀が眩しげに双眸を眇める。この眸を見ると時折、光秀は自らの心ごと凪へすべてを曝け出してやりたい衝動に陥った。

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