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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第8章 水魚の交わり



そう意気揚々と宣言した彼女に乞われるまま、こうして柔らかな大腿に頭を預けている訳だが、当の本人が若干恥ずかしさを引きずっている様が、どうにも光秀の目には愛らしくて仕方ない。

(お前が俺を気遣ってくれるというのなら、今回ばかりは素直に甘えるとしよう)

些かくすぐったさを感じる事は内に隠しつつ、胸中でそう零した光秀がおもむろに片手を伸ばす。

「普段とは異なる目線でお前を愛でるのも、中々に有意義だな」
「今回の視察は色々な御役目込みだったって聞いたので、少しでも光秀さんにゆっくりして欲しくて」

伸ばした指先が彼女の頬に触れる。そうすればまるで応えるように凪が光秀の手に自らのそれを重ね、慈しみを込めながら微笑んでみせた。労いの言葉以外であっても伝わって来る凪の気遣いに、光秀が口元を綻ばせる。

「お前には織田傘下の国へ視察に行くとしか伝えていなかった筈だが、秀吉辺りから聞いたのか」
「はい、確か傘下の大名の息子さんが祝言を挙げたから、そのお祝いの品を信長様の名代として届けに行ったんですよね」
「まあそんなところだ。やれやれ、あの男もお前には大概甘い」
「長旅で心配だろうからって教えてくれたんですよ。どうせ光秀の奴、碌に説明もしないで出掛けたんだろ、って」

割りと毎度の事ではあるが、光秀が凪へ任務の内容について詳細を語る事は少ない。此度の任務に関しては特に危険が絡む問題ではなかった為、その旨だけは明確にして出掛けたのだが。凪を妹分として可愛がる秀吉が兄心を発揮し、ひと月半という長い刻を待ちぼうけする彼女を気遣って、任務内容を明かしたのだろう。

「秀吉の顔が目に浮かぶようだな」
「ふふ……でも秀吉さんも光秀さんが帰って来るのが遅かった事、心配してたみたいですよ」
「なに、小言を言う相手が居ない所為で、張り合いがなかっただけだろう」
「もう……またそういう言い方するんだから」

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