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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第8章 水魚の交わり



隙間から漏れ聞こえる小さな吐息と、縋るように腕の力を強めて来る凪を僅かたりとも離さないと言わんばかりに抱きすくめ、彼女の息が上がるまで口内を蹂躙した。
やがて凪の身体からくったりと力が抜けて来た事を察し、呼吸を返してやる。肩を上下させる凪の眸は潤んでいて、それだけでまた唇に貪りつきたくなった。が、あまり負担をかけるのもよくないと考え改め、軽く吸い付くだけに留める。

「も、もう……っ、事実を言っただけ、なのに……」
「俺の独占欲が中々だという事は、お前もよく知っているだろう?」
「じゃあさっきの、ヤキモチ……ですか?」
「まあ否定はしない」
「凄い涼しい顔して言う……」

(そう見せているだけだ。これでも抑えている方なんだがな)

息を上げた凪の背を宥めるように優しく数度撫でた。白い肌が薄っすらと火照る様が愛らしく、つい口元が綻んでしまう。このままずっと腕の中に閉じ込め、抱きしめているというのも悪くはないが、色んなものの抑えが効かなくなる可能性もあった。凪が涼しい顔、と評するそれの裏側に熱を隠し、光秀は優しい手付きで彼女の髪を撫で梳いたのだった。




(これはこれは……一体どういう風の吹き回しやら)

春独特の暖かな日差しが満ちた縁側で、光秀は頭部の下に感じる柔らかな感触に軽く双眸を瞬かせる。視線の先には些か気恥ずかしそうな表情の凪がいて、自らを見下ろしていた。身長差の関係で、二人の目線の高さが同じになる機会は数えられる程しかない。ましてそれが逆転する事など、稀と言っても大仰ではない程だ。

端的な言葉で表現してしまうと光秀は現在、凪に膝枕をされている状態であった。事の発端は光秀が久々に再会した恋仲を思う様甘やかそうとした時である。

───長旅から帰って疲れてるんですから、今日は私が光秀さんを甘やかします!

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