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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第7章 おしえて、ちちうえ!



こくっと小さく喉を鳴らした後、大福ではなく今度は空気で頬をぷくっと膨らませ、ご機嫌斜めである様を主張する。

「まったく意固地な仔栗鼠だ。そういうところも母にそっくりだな」
「えっ!?突然の飛び火……!?」

仕方なさそうに瞼を伏せ、光秀が肩を竦めた。凪が目をぎょっとして驚く様を見て、光臣自身も仄かに同意するよう苦笑する。相変わらずぷくっと膨らんだ頬を指先で軽く突つき、光秀が幼子のそこから空気をぷしゅっと抜いた。やがて暫し思案を巡らせた後、男が長い銀糸の睫毛を伏せる。

「古くより人は生まれいずる折、土地神に許されて母の胎に降りると言われている」
「かみさま……?」
「ああ、その事からひとりひとりの身には、天之御中主神(あめのみなかぬし)と呼ばれる神が宿っていると考えられていたそうだ」
「光秀さん、それって神話か何か……ですか?」
「そんなところだろう。もっとも、お前達も知っての通り俺は神仏を信じている訳ではない。……だが、神話は遥か昔より語り継がれて来た教訓とも取れる」

光秀の語る言葉に、自然と凪を含め二人の子供達も静かに意識を向けていた。幼い光鴇には少々難しいかもしれないが、感覚的なものとして捉えているのだろう。再び大福を食べる手を止め、振り返りながら父をじっと見つめている。

「神話は教訓……では、俺達の身に天之御中主神なるものが宿っている、という話には、どんな教訓が込められているのですか?」
「俺のような者達はともかく、一般的に神は大切にされ、敬われるものだろう。その観点から考えれば、己の身に宿る神への扱いも、同じにしなければならないとは思わないか?」
「……あ!そっか、神社とかに祀られてる神様を大事にするなら、自分の中の神様も大事にしなきゃですもんね」
「そういう事だ。つまりその言い伝えは己を信じ、己の身を何よりも大切にしろという教訓の元となっているんだろう」

神仏を信じない光秀が、神話などの話題を口にするのは少々不思議な感覚がするものの、彼の言い分は何故かそれぞれの胸にしっくりと来た。

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