❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第7章 おしえて、ちちうえ!
「とき、どうやってうまれたの?なんであかご、おなか、いるの?」
「げほっ……!!」
「母上!?ご無事ですか!?」
無垢そのものな眼差しを光鴇から向けられ、凪が大福を軽く喉に詰まらせてむせた。片手で口元を押さえる母の姿を目の当たりにし、光臣が慌てて湯呑茶碗を凪へ渡す。薄っすら涙目になりながら茶碗を受け取った彼女が、何とかぬるくなった茶で詰まりを押し流し、一度深々とした溜息を漏らした。問いを投げかけた光鴇もさすがに驚いたらしく、立ち上がって凪の頭をよしよしと撫でる。
「ははうえ、だいじょぶ?いたいいたいとんでけ、する?」
「だ、大丈夫……ありがとう臣くん、鴇くん……」
「凪、平気か?」
「喉の詰まりは何とか……どっちかっていうと別の意味で大丈夫じゃないです……」
光秀が案じるように投げかけて来た言葉へ辛うじて応えると、凪がはあ、と再度溜息を漏らした。子供は成長するにつれ、様々な事へ疑問を覚え始める。なんで?なんで?と問うて来るのはままある事だ。光鴇も例に漏れず、興味の赴くままに疑問を投げかけて来る年頃なのだろう、とは十分過ぎる程に理解しているのだが。
(お父さんお母さんが子供によく訊かれる質問ランキング、ベスト五に入る質問がここで急に来るなんて……!!)
先輩パパママ、もとい先人達の切り抜け方にならい、キャベツ畑やコウノトリなどの話で誤魔化そうとも考えたが、そもそも乱世にコウノトリが赤子を運ぶ概念はないし、葉牡丹ならあれどキャベツもまだ日ノ本へ伝わって来ていない。何より光鴇は赤子が母親の胎の中にいる事を知っている。そうなるとキャベツ畑作戦は通用しないのだ。
「ははうえ、おしえて?なんで?」
「う……そ、それは……っ」
この純真無垢な幼子に、一体どのような説明をすべきか。多くの父母が頭を悩ませて来たであろう、ありがちだが下手な誤魔化しが利きそうにない疑問に、凪が言葉を詰まらせた。