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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



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彼方が世話になっている────もとい、彼方の一族が代々お世話になっているらしい老舗の呉服屋を、商品ごと持ち込んで欲しいと呼びつけたのは、彼女の宣言通り全員が朝食を終えた後の事であった。それまではフロア内のソファーで各々自由に過ごしていた一行だが、程なくしてやって来た呉服屋には凪と佐助も舌を巻いた。店が来い、の言葉通り、呉服屋の担当者が男女それぞれの浴衣と羽織、帯、下駄に雪駄、帯飾りや巾着などの小物に至るまで、様々なものをずらりと並べた様はまさに圧巻の一言である。その中から各自、それぞれ好みのものを選んで着替え、出掛ける事となった。京都は和の町である為、レンタル着物などをまとって観光する客も数多く居る。五百年前の装いはさておき、通常の浴衣姿であればそこまで妙な目は向けられる事はないだろう、という彼方の見解であった。

選んだ着物などの一式を部屋へ持ち帰り、着替えを済ませたら集合すると決め、各人は一度自室へ戻る。凪と光秀も例に漏れず、二人で借りている一室へ戻って着替える事となった。ちなみに彼方から自由に使っていいと言われたメイク道具一式も借りる事が出来、最悪すっぴんで出掛ける覚悟をしていた凪は心底安堵すると、有り難く一式を持って部屋へ引っ込んだのだった。

「良かった―…せっかく浴衣なのにすっぴんはちょっとね…」

室内に設置されているドレッサーは所謂女優ミラーつきであり、それの前に腰掛けてメイクを終えた凪が安堵の息を漏らす。ばっちりと化粧を施した後で、道具と共に借りたヘアアイロンでゆる巻きを作っていった。両サイドの髪をひと房ずつ残して緩く巻き、後ろ髪は耳下辺りで上下に分ける。左右の毛束を捻って上の髪へ下から通し、捻じり上げる形で左寄りの結目を作ると、毛束をくるんと一回転させて全体的にルーズに崩した。毛束をアイロンで更に巻き、結目のところに留め挿しとして芙蓉の簪を挿した後、毛先を左肩へ流す。崩れないようにヘアスプレーをかければ髪型の完成だ。

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