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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第6章 人酒を飲む、酒酒を飲む、酒人を飲む



相性がいいのか悪いのか、日頃から説教の対象である光秀が、盃の中の透明な酒を軽く揺らして事も無げに零した。長い銀糸の睫毛を伏せて薄く笑う男の横顔をじっと見つめ、凪が思わず笑みを漏らす。冗談めかした言葉の中に潜む、光秀の本心を捉えて微笑ましい気持ちになったのだ。

「なんだかんだ言って光秀さん、秀吉さんの事心配してますよね」

酒で酔いが回ったのとは少し訳が違う、何処かふわふわした心地を抱きながら、凪がはにかむ。その刹那、片手で酒器を持っていた男がそれを軽く呷って空にした。そうして彼女の身を抱き寄せていた片腕を動かし、後頭部をそっと押さえる。凪が何かを口にするより速く、自然な所作で光秀が彼女の唇を塞いだ。

「んっ、ぅ………」

柔らかな唇同士が重なり合い、舌先で隙間を優しく割られる。抵抗する間もなく薄く開かれたそこから、少しずつ酒が注がれた。こく、こく、と小さな音を立てて光秀から与えられるものを飲み込み、凪が伏せた長い睫毛を震わせる。空になった盃を膳へ戻しながら光秀が凪の身体を、今度は両腕で抱き寄せて自らの胸へ撓垂(しなだ)れかからせた。

酒を口移ししただけに留まらず、男の舌先が酒の所為で少しひんやりとした彼女の口内を掻き回す。柔らかで繊細な粘膜の感触を堪能し、過敏な神経が幾つも集まる舌の表面同士をすり合わせた。

「っ……ぅ……」

小さな水音を跳ねさせ、ゆっくりと熱を伝え合わせるよう絡ませ合えば、凪の身体はますます脱力して男へと身を委ねた。角度を変えて深く貪り、光秀が目の前にある愛しい連れ合いの顔を見て、目元を密やかに和らげる。

酒など水に多少味がついている程度、そんな認識しかしないこの舌を、こうも楽しませるものが現世(うつしよ)に存在したとは、と今でも改めて思う事が多々あった。水の跳ねる音に合わせて微かにいじらしく震える睫毛や、光秀の舌先に応えるよう絡んで来る柔らかい舌、合間に漏れる浅く甘い吐息ひとつとっても、光秀には病みつきになる極上の美酒に違いない。

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