❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
「帰蝶さんには色々外国の品物をお土産に頂いてるので、ずっとお礼がしたいって思ってたんですけど、それがようやく叶いそうです」
「俺がやりたくてやった事だ。気を回す必要はない……と言っても、お前は聞かないのだろうな」
「ふふ、当然です」
笑みを浮かべながら応えた凪が小さな長方形の包みを手にし、それを渡す。掌より少し大きめなサイズ感のそれを帰蝶が受け取った。
「開けてもいいか」
「どうぞ」
「きちょーのおみやげ?たべれる?」
「キチョー、タベレル?」
丁寧な所作で包み紙を開いて行く帰蝶の手元をじっと見つめ、光鴇が大きな金色の猫目を瞬かせた。そこへ重ねるように福が喋り、光秀が口角を持ち上げる。
「どうやら仔栗鼠と小鳥のおつむは似ているらしい」
「判断基準が食べられるかどうかですからね……大体、お前も一緒に選んだだろう?」
「ん?」
光秀が揶揄し、光臣が苦笑するその理由にまったく気付いていない光鴇がきょとんとした様子で首を傾げた。そうしている間に包みを開けた帰蝶の目に入り込んで来たのは、黒いベルベット調のケースだ。それを開けると、中には紺色の軸に白で片羽の蝶が描かれた万年筆が収められていた。
「これは、万年筆か」
「はい、お仕事で何かと入用かなと思って。ボールペンでもいいかと思ったんですけど、せっかくだし。あ、ちなみにインクカートリッジ取り替え式なので、結構長持ちしますよ」
「俺もあちらの世でぼーるぺんなるものを買ってもらいましたが、文字を書くのに凄く便利ですよね」
ノック式のボールペンとも悩んだが、帰蝶が持っているイメージならばこちらだろうと選び決めたのだった。取り替え用のインクも複数購入している為、そこそこ長く使って貰える筈だ。乱世に戻ってから、すっかり光臣自身も愛用しているボールペンについて触れれば、帰蝶が万年筆の軸を指先でそっと撫でながら頷く。
「ああ、墨と筆を持ち歩かなくていい分、余分な荷物が減る」