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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



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和洋が程良く混ざり合ったその大きな建物内には、海の向こうから取り寄せたと思われる様々な調度品の数々が飾られていた。応接間にてしばらく過ごした後、この屋敷内に勤めている男の案内で、二階の最奥に位置する部屋へと足を向けている凪と光秀は現在、光臣と光鴇を連れて堺を訪れている。ここは信長の命により、諸外国と様々な交易を行う事となった堺の要所且つ拠点、南蛮商館だ。

今回は大阪城へ居を移した信長へ報告と顔見せを済ませた後、この商館の商館長に用事がある為、こうして足を向けたという訳である。普段、大阪城へ向かう際には光秀一人で訪れる事が比較的多いが、妻子を伴って一路堺までやって来たのも、主に商館長への所用の為という理由が大きい。

「帰蝶様、お連れ致しました」
「ああ」

重厚な扉を部下が慣れた様子で三度軽く叩くと、室内から程無く返答がある。そのまま男は一礼して立ち去り、入れ替わるように目の前の扉が開かれた。その瞬間、光秀と手を繋いでいた光鴇がぱっとそれを離し、部屋の主の元へ一目散に駆けて行く。

「きちょー!とき、あそびにきた!」

紺色の袴へぎゅっと抱きついた幼子の黒髪を、出迎えた帰蝶が優しく撫でた。そうして萌黄色の双眸を凪へ向け、穏やかに眇める。

「安土から遥々、よく来たな」
「急に皆で押しかけてすみません、帰蝶さん」
「帰蝶さん、お久し振りです」

凪がやや苦笑めいた様子で挨拶する隣で、光臣も笑みを浮かべた。実は此度の訪問は割りと唐突に決まった事で、帰蝶の元へその旨が伝わったのも実に昨日の事だったのだ。

現代で言うところの、分刻みのスケジュールで生きている多忙を極めた帰蝶にアポイントメントを取るのは本来中々難儀なのだが、存外あっさりそれが通った事に驚きつつも、やはり申し訳なく凪としては思っていた。光秀が凪へ真っ直ぐに視線を注いでいる自身の従兄弟を映し、ゆるりと肩を竦める。

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