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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



「実は今朝方解散になった後、彼方さんにお願いして屋上の天文ルームをお借りしたんです。ワームホールの観測をしないと、いつ乱世に帰れるか分かりませんから」
「え、天文ルームなんてあったの!?」
「うん、父親の趣味で作ったんだけど、見事に利用者無くて今月中に個人的なトレーニングルームにでも改築しようかと思ってたんだよね。思わぬ形で需要があって何よりだわ」

ワームホールはいつ開くのか、それは武将達のみならず凪や佐助も当然気にかかるところだった。天文ルームなどという都合が良すぎるものがちょうど存在した事に驚いた凪に対し、彼方が笑って頷く。武将達はいまいち天文ルームといった言葉を図りきれていない為、曖昧な表情を浮かべていた。

「結論的に言えば、次のワームホールは七日後、俺達が最初に倒れていた本能寺跡の石碑付近に発生する予定です。異常性のワームホールだった事が幸いしたようで、普段よりだいぶ早い帰還になりそうですね」
「じゃあ、七日後にまたあの場所に居れば、元の乱世へ戻れるって事だな」
「はい。引き続き今後も観測を続けて、何か異変があれば皆さんに随時共有します」

次回のワームホールが開くのが七日後だと聞き、武将達は安堵した様子だった。さすがに何の連絡もなく、安土から四人も武将が消えてしまったなら大騒ぎになっている事請け合いだ。その中でも特に安堵の色を濃く見せたのが秀吉である。改めて確認するよう真剣な面持ちで佐助に問えば、彼もしっかりと秀吉ヘ視線を合わせ、確信を持って頷いた。まったく見通しが立たないよりは余程いい。帰れる予定が立った事で、胸の片隅にあった不安がそれぞれ解消されたのだろう、武将達はそっと肩の力を抜いたようだった。

(何だかんだ言って皆きっと安土の事とか心配だったよね。ワームホールが開くのが、何年も先…とかそういう途方も無い感じじゃなくて本当に良かったな)

光秀も口に出してはいないが、恐らく色々と案じていただろう。凪が密やかに胸を撫で下ろしていると、隣に座る光秀がふわりと彼女の頭を片手で撫ぜる。

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