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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



「あ、彼方様…」
「人参嫌いなんでしょ?じゃあ私が食べる。早く他のに手つけないと、お味噌汁とか冷めちゃうよ」
「ありがとうございます、彼方様」
「こら彼方、三成を甘やかすんじゃない」
「一番甘やかしてそうな人が何言ってるの、秀吉さん」

虚を衝かれたのは三成であり、散々睨み合っていた人参が彼方の手によってぱくりと食べられると、驚いた様を露わに双眼を見開く。言い合いをしていた他の面々も一斉に口を噤むと、彼方へ視線が集まった。それを物ともせずに咀嚼し、呑み込んだ彼女はからりとした様で告げ、小さく笑う。些か目元を朱色に染めた三成がはにかみながら礼を言う中、秀吉が仕方ないなといった面持ちで、それでも一応注意すると、すぐに反論が返って来た。

「思わぬ伏兵は彼方殿だったようだな」
「彼方、細かい事気にしない性格だから」

彼方の行動は光秀でも予想だにしなかったらしく、何処か可笑しそうにくつりと喉奥で笑った後、小鉢の煮物を更に器へと混ぜる。次々におかずが主食であった筈の五目炊き込みご飯の中へ呑み込まれて行く様を視界の端へ捉えながら、凪が同意を示して小さく頷き、フォークに乗せたふわふわのオムレツを頬張った。

「凪も最初、かなり変わった女だと思ったけど、あんたの友人も相当の変わり者だよね」
「びっくりイケメン武将達よりはまあマシよ」

真紅の五目炊き込みご飯を綺麗な箸使いで食べつつ、家康が瞼を伏せる。乱世の人間からしてみれば、凪もさることながら彼方のような女もそうそう居ない。ソーセージをフォークで刺してそれを食べていた彼方がけろりとした様で反論した後、傍らにあるコーヒーのカップへ口をつけた。

「そうだ、皆さんに伝えておかなきゃいけない事があります」
「どうしたの?佐助くん」

フォークを一度置いた佐助が、ふと改まった様子で面々を見回し、静かに切り出す。何処となく真剣な様子を前にして手にしていたスープカップを置き、凪が首を傾げた。全員からの注目を受けた後、佐助は幾分真摯な面持ちのまま口を開く。

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