❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「柔らかいな」
「光秀さんパンに抵抗ないんですね、良かった…!」
「いやちょっとあんた喜ぶポイント明らか間違ってるでしょ!?」
嬉しそうに笑う凪を見て、早々に耐えきれなくなった彼方が突っ込む。食べさせ合いはまだ微笑ましいものとして受け入れられなくもないが、感想と感想に対しての更なる感想がおかしい。光秀の味音痴は安土勢武将全員が把握している為、今更驚きはしないが、彼方は違う。料理に手を付けていた秀吉が、彼方へ苦笑しつつ彼女を宥めた。
「あの男はいつもああだから気にしないでくれ。光秀にまともな料理の感想を求めても無駄だ」
「凪もすっかり光秀さんの反応に慣れたから、その所為でああいう反応に行き着いただけだよ」
「朝のおにぎりの時もちょっと不穏な気配感じたけど、そういう事だったのね……」
秀吉の言葉へ補足するよう家康が告げ、あさりの味噌汁の中に例の小瓶を振り掛けながら表面を真っ赤に染めている。家康の辛党ぶりも少々度が過ぎている気もするが、光秀よりはましである。たらこを食して塩だな、と感想を述べていた時から思っていた事を吐き出した彼方は、深々と溜息を漏らしつつ、隣できょとんとしている凪へ片手を振った。
「どうかした?彼方」
「いや、なんでもないわ。あんた達は勝手にイチャついてて」
「い、イチャついてないよ…!」
凪にとっては、味云々などよりも光秀がまともな食事を摂ってくれるという事の方が重要な為、味の感想はまあ二の次というやつだ。不思議そうな面持ちを浮かべている友人へ投げやりな言葉をかければ、あーんを互いにやりあっていた事を思い起こした凪が恥ずかしそうに反論する。光秀が衝撃の味音痴だという事実へ密やかに驚いていた佐助はしかし、そんな二人のやり取りを何処か微笑ましそうに見ながら、改めて料理へ向き直った。
「パンか…四年振りだな。チーズは乱世で改良してそれに近い味を再現したけど、本物はやっぱり違う」
「チーズ再現するのも常人じゃ出来ないからね、佐助くん」