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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



むきになった様子で強く否定した光臣が眉間を顰める様を目にし、凪が思わず苦笑した。そうして思い立った様子で光秀と子供達を見る。

「そうだ、まだ夕餉まで時間あるし、三人で露天風呂入って来たらどうかな?」
「とき、ちちうえとあにうえとろてんぶろ、はいりたい!」
「これだけ広いと余裕で入れそうですしね」

窓から見える少々珍しい形の風呂に興味がそそられていたのか、光鴇が嬉しそうに声を上げた。とん、とその場で軽く跳ねた拍子に、腰の尻尾がゆらりと揺れる。浴槽が三つもある為、三人と言わず五六人くらいは余裕で入れそうだ。賛成の色が濃い子供達を目にした後、光秀が凪へ視線を流した。涼やかな眸に己の姿が映り込み、どきりと胸が鳴る。

「なんだ、お前は一緒に入らないのか凪」
「え゛っ!!?」
「えっ!!?」

光秀がさも当然のように訊いたそれに対し、凪が反射的に短い声を上げた。そして更に光臣の虚に衝かれた声も被る。幼い光鴇はともかく、光臣は現代に置き換えて見ても年頃の少年だ。母と風呂に入るというのは抵抗があるという事なのだろう。昔は一緒に沢山入ったのに……と一抹の寂しさを覚える反面、さすがに自分としてもどうだろうと思わなくはない凪が、慌てて首を左右に振る。

「わ、私は後でいいので、光秀さん達だけでまずはゆっくり入ってください……!!」
「ははうえ、いっしょはいらないの?とき、いっしょはいりたい……」
「見てみろ、捨てられた仔犬ならぬ、捨てられた仔狐のような顔をしているぞ」
「うう……っ」

母が遠慮したそれを聞きつけ、光鴇が大きな金色の猫目をゆらゆらと揺らしてじっと凪を見上げる。すっと光秀がさり気なく幼子を凪の正面に来るよう移動させ、さも同情を誘う言葉を並べた。子供のきらきらうるうるした眼差しを無碍に出来る親がいようか、否いまい。

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