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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



時間まで何をしよう、そう頭を軽く捻った凪の耳に、興奮した光鴇の声が聞こえて来た。父にべったりな次男の元へ光秀が近付いて行くのを目にし、凪も足を向ける。

「どうした、鴇」
「こっち、おそとにゆあみば、ある」
「ほう、豪勢なものだな」
「湯浴み場がこんなに近くに……湯は何処から出てるんでしょう?」

硝子張りの窓の向こうには竹垣できれいにぐるりと囲まれた露天風呂があった。それも豪勢に三種類程浴槽があり、竹筒から暖かな湯が浴槽へ絶え間なく注がれている。湯気がじんわりと立つ浴槽の周りには檜の板が敷き詰められていて、部屋から直接行き来出来る仕様だ。湯殿と言えば屋内を想像する光秀が目を瞬かせる横で、光臣も感心の声を零す。何事にも興味を持って疑問を覚える息子を微笑ましく思い、凪が窓際に立つ三人の傍へ寄った。

「元々この宿の湯浴み場は全部に源泉を引いてるってパンフレットに書いてあったよ。大浴場も本館にあるけど、個室露天風呂なんて何だか豪華だね。ちなみに大浴場は乱世と違って混浴じゃないから安心してね」
「べ、別に俺は何も言ってませんよ……!」

受付で着物姿の女将に手渡されたパンフレット内に記載されていた内容を伝えた後、凪が安心させる目的で補足すると光臣が途端に顔を赤く染めた。乱世でまだ湯屋は広く庶民達にまで広まってはいないが、極稀に見かけるそこは大抵男女共用、即ち混浴である。湯治の温泉宿なども然りだが、凪自身未だに混浴を光秀以外と体験した事がないので、恐らく夫が何か綿密な根回しをしているのだろう(大抵心付けを渡して貸し切っている)。

「臣、そんな事を気にしていたのか」
「いたのかー」
「してません……!!」

光秀が口角を持ち上げて明らかに揶揄を含ませたそれを投げると、横で光鴇もまた父のロングカーディガンの裾を握りながら語尾をオウム返しする。

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