• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



「凪、荷物を貸してみろ」
「ありがとうございます」
「わーい、ときいちばんー!」
「あ、こら鴇、部屋の中を走っては駄目だろう」

未だに腰へ狐尻尾のふさふさしたキーホルダーをぶら下げた光鴇が、早速室内へと立ち入った。光秀に促されるまま荷物を渡し、凪が逆に光臣からケーキの箱をそっと受け取る。ケーキ屋から出た後、箱の存在を見咎めた光秀が「父に隠し事か?鴇」と幼子へ狙いを定めて探りを入れていたが(光鴇は目を泳がせてとき、ひみつ、ないと必死に否定していた)、そこは光臣のフォローによって何とか事なきを得た。当人も深く言及するつもりはなかったのか、店前でそんなやり取りをして以降、箱について触れて来る様子はない。

(ケーキについても何とか誤魔化せたし、良かったあ。さすがの光秀さんもバースデーケーキについては予想出来ないでしょ。取り敢えず夜まで冷蔵庫で冷やしておこっと)

今回の一室にも簡易的なキッチンが備え付けられている。冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器まで完備という準備の良さだ。中型冷蔵庫内へケーキの箱を丁寧にしまい込み、扉を閉める。室内の方からは主に光鴇のはしゃぐ声が聞こえて来て、つい面持ちが綻んだ。

(やっぱり洋室より和室の方が私自身も落ち着くかも。すっかり乱世に染まったなあ)

以前は室内の床はフローリングでないと嫌だ、など色々あったが、今はむしろこのい草の香りが心を安らかにしてくれる。襖も障子も乱世の面影を感じさせる要素ばかりで、まだ現代にやって来て二日目だというのに、それを懐かしく感じた。

(光秀さんも、元の世に近い雰囲気の場所でゆっくり寛いで欲しいな。さて、晩御飯の時間までは余裕もあるし、何しよう)

「ちちうえ、みて!こっち!」

一泊二食つきという事で、朝晩の料理は仲居達が室内まで運んでくれる事になっている。ちなみに寝室にあたる部屋は別になっていて、光秀が荷物をしまってくれたのもそちらの部屋だ。

/ 772ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp