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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



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ケーキ屋で光秀のバースデーケーキを購入した後、明智家は今宵の宿直通となるバスへ定刻通りに乗り込み、京都駅前を出発した。バスに揺られて一時間弱程、到着したのは京都の中心地からはやや外れた場所に広大な敷地を有する、老舗の温泉旅館であった。洋風なホテルも子供達にとっては物珍しいだろうと初日はそこを選んだが、やはり純和風感の漂う空間の方が当人達も落ち着くだろう、という凪の気遣いという訳だ。高さを出さず、敢えて平屋にした事でいっそうその広さが外観からも窺える。

凪達が宿泊する部屋は本館から渡り廊下で繋がっている離れだ。離れ一棟がまるっと貸し切り状態になっていて、隠れ家的要素もふんだんに含まれている。廻り縁が設けられた縁側の向こうには美しく整えられた風流な季節の庭が広がり、透き通った池には鯉が優雅に泳いでいた。

広々した室内は一部設備こそ現代を思わせる要素も取り入れられているものの、見回した先は乱世でも割りと馴染みある間取りや調度品が備え付けられている。質素過ぎず華美過ぎずな襖の絵なども落ち着いた空間をよく演出しており、まるで乱世の豪華な一室に招待されたような気分になる。

「素敵なお部屋……!やっぱり畳の香りが落ち着くね」
「たたみ、いいにおい!」
「何だか突然乱世へ戻ったような感覚になります」

襖を開けたと同時、新緑の香りが強く鼻孔をくすぐった。嗅覚強い組である三人がはっとした様子で目を瞠っている様を見やり、光秀が可笑しそうに笑みを零す。座椅子と座卓、床の間には美しい生花と掛け軸、衝立や行灯型の間接照明などが置かれていて、観音開きの扉を開けると、そこにテレビのディスプレイが設置されているなど、現代の機器が極力目に入らないよう工夫がされていた。そこが元の世を彷彿とさせる要素のひとつなのだろう。寝床は後で仲居が用意してくれるとあり、部屋そのものが実に広々としている。

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