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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



「待て鴇、それだけの文字量ではぷれーととやらに収まらないだろう。もっと短くしなければ」
「むっ……あにうえのいじわる」
「意地悪とかそういう問題ではないが……ではこの名の下に、ちちうえと書き足すのはどうだろうか」
「そうだね、そうすれば光秀さんとちちうえと両方でおめでとうって意味になるし。鴇くんもそれでいいかな?」
「いいよ!」
「じゃあすみません、そのようにお願い出来ますか?」
「かしこまりました、少々お待ちください」

改めて店員に注文をすると、【光秀さん】の文字の下へ新たに【ちちうえ】の文字が追加される。そうすれば凪だけでなく、子供達からもメッセージを送ったという印象になるだろう。抱き上げていた光鴇を下ろして凪が改めてケーキを確認する。ケーキそのものは子供達にもまだ内緒だ。無事確認を終え、立てるろうそくを入れて貰った凪が会計を済ませてケーキの箱を受け取る。光臣がすぐに箱を母の手からそっと受け取り、笑みを浮かべた。

「ではこれは俺が持ちます」
「ありがとう、揺らすと崩れちゃうから気を付けてね」
「分かりました。お任せください」
「二人共、光秀さんにはケーキの事は内緒だよ?聞かれても内緒って言ってね」
「わかった。とき、ないしょ、する!」

光秀にはケーキを買ったという事を直前まで内緒にするべく、二人へ口止めをする。人差し指を口元へあてがった凪を目にして光鴇が笑顔を浮かべ、母の仕草を真似て小さな人差し指を立てた。隠し事が苦手な母と弟が、果たして尋問を得意とする父の追及を逃れる事が出来るのか。そんな一抹の不安を抱えながらも、光臣は手にした真っ白な箱を揺らさぬよう気遣いながら、二人に続いてケーキ屋を後にしたのだった。

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