❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
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───────五百年後に強制連行されてから七時間後。
最上階フロア内にはロビーと個室の他、ラウンジと会食用のレストランが併設されている。一度部屋で各々休んだ後、一同は彼方の呼び掛けによって遅めの朝餉を摂るべくレストランに連れて来られていた。長方形の長テーブルへ着席した後、武将たちは和食、現代人組である凪と彼方、佐助は洋食が用意されて、それぞれシェフが腕を奮ってくれた湯気と香り立つ食欲をそそる料理へ舌鼓を打つ事となったのである。テーブルの配置は、光秀と秀吉が向かい合う形で端に座り、光秀の隣には凪と彼方と佐助、秀吉側は隣が三成、家康の順で並ぶ形となっていた。真白なテーブルクロスの上に置かれた和食の膳には、五目炊き込みご飯としじみの味噌汁、鮭の塩焼きになます、香の物、だし巻き玉子に煮物といった品々が並べられており、いずれも乱世育ちの武将たちに馴染みのあるラインナップだ。
「わあ、炊き込みご飯だ」
蓋を開けた瞬間に視界へ映り込んだ湯気の立つ美味しそうな五目炊き込みご飯へ、凪が声を上げる。野菜が豊富且つ、出汁がよく利いた主食は食物繊維と栄養満点で光秀にもってこいなメニューである。他の品々も彼方がシェフに口利きしてくれたらしく、あまり濃すぎないシンプルめな味付けで調整をしてくれている為、料理に対するカルチャーショックも問題無さそうだ。隣に座っていた凪が告げた言葉へくすりと小さく笑いを零し、開けた蓋を横へ置きながら光秀が箸を手に取った。器を手にして一口分をすくい上げ、それを凪へそっと差し出す。
「え、あ…あの、そういう意味じゃ…」
「俺がお前に食べさせたいだけだ。早く口を開けなければ落ちるぞ」
綺麗な箸使いで差し出されたそれを前に、凪が慌てて首を振った。別に一口欲しいだとか、そういった意図ではなく、純粋に声を上げてしまっただけなのだ。これだけの人が居る中で、所謂あーんは恥ずかしい。目元を微かに紅く染めた彼女の言い分など初めから分かっていたのか、光秀がいつもの調子で告げた。