❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
しかししつこく追及するのも良くないと考えたらしく、小さく笑って話題を変える。ちらりと枕元ヘ視線を流せば、大きな枕と思わしきものが二つ並んで置かれていた。敢えて茶化して告げると、凪は照れを隠すように眉根を寄せる。
「光秀さんがいつの間にか枕取っちゃうんじゃないですか」
「おやおや、それは心外だ。お前が寝ながら擦り寄って来る時に、邪魔だろうと気を回して取り去ってやっていたんだが」
「……擦り寄ってないです」
「どちらにせよ、離れて眠るなど今となっては考え難い事だな」
憮然とした調子を耳にし、片眉を持ち上げてわざとらしく告げた光秀がくすりと微かな笑い声を漏らした。光秀が居る時は大抵腕枕で眠る事が多い凪へ揶揄を投げる。ますます憮然とした面持ちになった彼女の頭を片手で優しく撫でやり、光秀は何処か穏やかな声色で告げた。
「さて、お喋りはこの位にして、そろそろ眠るとしよう。どうにもお前の瞼が重そうだ」
「……う、シャワー浴びたら途端に眠気が来てですね…」
暖かな凪の身体はふわふわとした熱に包まれているかのようだ。空調によって適温に保たれている室内では、外界の蒸し暑さを感じる事もない。快適な空間に身を置くことで、すっかり気が緩んでしまったのだろう。凪の大きな猫目が幾分とろりと蕩けている事を見てとり、男はあやすような手付きで瞼へ触れた。ワームホールボケが治って来ているのか、光秀の指摘通り、彼女の意識は少しずつ眠気に支配されて行く。気まずそうな面持ちで告げた凪を余所に、吐息混じりの笑いを零して光秀がするりとベッドへ身を滑り込ませた。
「凪、おいで」
大人四人は余裕で横になれるのではないかと思わしめる程の広さがあるベッドの中央、誘うかの如く柔らかな声で告げた光秀へ凪が小さく頷く。ゆっくりと男の隣へ横たわると掛け布団をそっと引き上げられた。
「おやすみ」
「おやすみなさい、光秀さん」
御殿の褥とは何もかもが異なる柔らかく、何処かひんやりとしたベッドの中でどちらからともなく言葉を紡ぐ。伸ばした片腕で凪の細腰をぐっと引き寄せた光秀は、抵抗なく自らの腕の中へと収まった彼女の頭の下へ腕を置き、眠たげな甘い唇へ触れるだけの口付けを落としたのだった。