❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
「母上、ここへはけーきとやらを買いに来たのですか?」
「うん、こっちでは生まれ日のお祝いにケーキを食べるっていう習慣があってね。ケーキにろうそくを立てて、生まれ日の人が吹き消すの」
「く、食い物にろうそくを……?珍妙な習慣ですね……」
「じゃあちちうえがふーってする?」
「そうだよ。ちなみにろうそくはろうそくでも、臣くんが想像してるのとはかなり違うかな」
誕生日の祝いにケーキを食べる、というよりケーキにろうそくを立てる方が光臣には衝撃的であったらしい。理解し難い、と言わんばかりに眉根を寄せて難しい顔をした少年の横で、光鴇が首を傾げた。光秀がろうそくを吹き消している場面を想像して笑みを零し、凪が笑いながら肯定する。
(乱世ではどうしてもケーキって材料の問題で作るの難しいから、今までは何とかホットケーキとかで代用して来たけど、実際ろうそくとか吹き消すのは初めてだな。楽しみ……!)
「明智様、プレートのご確認をお願い致します」
「はい」
「ときもぷれーと、みたい!」
「じゃあ抱っこしてあげるね」
店員に呼ばれて振り返ると、光鴇がとんと跳ねてねだる。赤子の頃に比べれば随分と重くなった光鴇の成長を顕著に感じつつ抱き上げると、店員が差し出すプレートを見えるようにしてやった。ココア色のチョコレートプレートには、ホワイトチョコのペンで指定通りの文字が書かれている。横から光臣もそれを覗き込むと、感心した様子で目を瞬かせていた。
「なんてかいてあるの?」
「光秀さん、お誕生日おめでとうって書いてあるんだよ。……でもこれだと私からだけのメッセージになっちゃいそうだね……うーん」
「何か追加されますか?」
「とき、ちちうえ、おめでとうってかいてほしい!」
光秀さん、と書いてしまうと自分一人だけのメッセージに見えると悩む凪に対し、店員が気を利かせて問いかけて来た。そうすればすぐに光鴇が反応を示し、光臣が目を瞠る。