❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
宝石のようなケーキ、というのがこの店のコンセプトであるらしいが、まさにその通り宝石の如く美しい洋菓子が目を楽しませた。
「すごい!きらきら、きれい!」
「ここは南蛮の甘味処……ですか?」
「うん、ケーキっていうんだよ。クッキーは食べた事あるでしょ?」
「きちょーがいつもくれるやつ」
「そういうお菓子を扱ってるお店なの」
店員達はケーキなどに関して無知なやたら整った顔立ちの少年と、狐の尻尾をぶら下げた愛らしい子供を実に奇々怪々な眼差しで見つめる。確かに今どきケーキを知らない子供というのは珍しいだろう。正直こちらにやって来て母上、と呼ばれる度に好奇の眼差しを向けられていた為、段々慣れて来た凪はさして気にする様子もなく、子供達に教えてあげた。店内を興味深そうに眺める子供達を他所に凪がカウンターまで向かい、店員へ声をかける。
「すみません、注文をしていた明智ですけど……」
「明智様ですね。かしこまりました。少々お待ちください」
端末で注文情報を確認した店員が、画面へ視線を向けた後で再び凪へ向き直った。先程の好奇な眼差しなどまるでなかったかの如く対応する辺り、プロである。
「お誕生日ケーキのご予約をいただいておりました明智様ですね。お品物は完成しております。ケーキへ乗せるプレートにお名前やメッセージが添えられますが、如何致しましょう」
「じゃあお願いします。メッセージはえーと、【光秀さん、お誕生日おめでとう】で」
「かしこまりました。只今ご用意致します」
実は先日凪がスマホで注文をしていたのは、光秀の為のバースデーケーキであった。乱世では材料の関係もあって中々再現が難しいが、現代ならば豪勢なケーキで祝う事が出来る。店員が早速チョコプレートにデコレーションペンでメッセージを書き始めた。その様子を物珍しそうに眺めて息子達が凪の傍までやって来る。