• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



「きつねさん、いた!」
「わ、ちょうど換毛期なのかな。薄っすら灰色がかってて綺麗だね」
「普通の狐よりも少し犬に似た印象な気がします」
「尾の形は狐だが、よく見かける野狐よりも毛皮が多いな」

硝子の向こうに居る狐は薄い灰色の被毛をふんだんに蓄えており、優雅に前肢を舐めている。先の丸い三角耳とふさふさした太い尾、鼻先が長い姿は狐と言われれば狐だが、一般的な狐とは異なり、光臣の言う通り少々犬に近い見た目だ。想像していた姿とは異なるそれへ光秀達が感想を零す中、凪が動物に関する解説が書かれた看板を見る。

「ホッキョクギツネは元々凄く寒いところに住んでる狐で、夏と冬では被毛の色が違うって書いてあります。冬だと真っ白になるみたいですよ」
「では今時期は色が移り変わる境といったところか」
「だから灰色がかっているのですね。真っ白な姿も興味があります」
「きつねさんまっしろ、ならない?」
「残念だが、一朝一夕で変わるものではないだろう」
「むっ……とき、まっしろみたかった」

もっと寒さが深まれば被毛の色も変わったのだろうが、生憎と今は初秋だ。夏を終えたばかりという事もあり、真っ白には程遠い。白い狐は光秀、そういった意識がある光鴇が残念そうに眉尻を下げて呟く。だが生態系ばかりは仕方のない事で、父が宥めるよう片手でふわふわの帽子を撫でた。

「色はちょっと残念だけど、昼行性だから日中でも動いてる姿が見れて良かったですね。結構動物って夜行性が多かったりしますし」
「ああ、寝ている動物も思いのほか多くいたからな。ほら鴇、拗ねていないで見てみるといい。他にも狐がいるようだ」
「どうやら家族のようですね、番がいます。……あ、仔狐がいますよ!」
「…!ちいさいきつねさん、かわいい!」

ホッキョクギツネは昼行性で、そういった意味では動物園向きの動物と言えるだろう。中には夜行性の動物達も多くいて、巣穴で眠っている種類もそこそこいた事を思い出し、光秀が相槌を打つ。

/ 772ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp