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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



同時に体温もじわりと上がってしまい、シャワーを浴びる前にすっかり熱を上げてしまった凪は、傍で笑みを刻む端麗な男へぽつりと呟きを零した。

「……もう、十分熱いんですけど」




凪がシャワーから上がり、髪をしっかり乾かしてから戻って来た時、光秀はソファー前の窓際に立って外の景色を静かに眺めていた。気配を感じて背後を振り返り、彼女の姿を認めた光秀が微笑する。穏やかな笑みを前にして凪も笑い返し、そのまま寝室へ向かった。二部屋ある寝室の内、窓際では無い方を選んだのは射し込む朝陽で睡眠が妨げられては困ると配慮しての事だ。寝室の照明を落とすと一気に薄闇へと包まれる。大きなキングサイズのベッドの端へ向かい、そこへ腰掛けた凪に倣い、光秀が反対側へ腰を下ろした。スプリングすら軋まない高級ベッドは想像以上に柔らかく、光秀を密かに驚かせる。

「わ、柔らかくてふかふかだ…!」

嬉しそうな凪の声が鼓膜を打った。片手でそっとベッドを押しやると、触れた箇所が圧力に逆らう事なく沈む。肌触りの良い寝具は当然乱世とは異なるものであり、白く清潔感のある柔らかな夏用の薄く軽い掛け布団の感触にも驚きを禁じ得ない。快適過ぎて逆に落ち着かない心地というのはこういった事を指すのだろうか。

「光秀さん、もしかして柔らか過ぎて落ち着かないですか?」

ふと後方から凪の声がかけられる。思っていた事をさらりと指摘され、内心で苦笑を零した男はしかし、それを胸に押し込めた状態で反対側に座る彼女の方へ振り返った。両手をベッドの上につき、軽く身を乗り出すような体勢でこちらを窺う凪を視界に映し、頬にかかる横髪をそっと指先で払ってやる。

「いや、確かに柔らかさには驚いたが問題はない」
「それならいいんですけど…でも初めてだとちょっと戸惑っちゃいますよね。私も箱枕、相変わらず慣れないですし」
「俺が居る時は必要のないものだがな」

せっかく久々の現代を堪能している凪に対し、水を差すような真似をする必要はない。当たり障りのない言葉で誤魔化すと、彼女は訝しげな様を露わにして眉根を寄せ、首を軽く捻った。

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