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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



さらりと事も無げに告げた光秀の衝撃的発言へ、兄と母の声がほとんど同時に被る。光鴇だけは意味が分からず目を丸くし、父を不思議そうに見上げた。片手でぽん、と幼子の頭を撫でてやっていると、逸早く我に返った光臣が頬や耳朶を赤く染めながら眦(まなじり)を僅かに上げる。

「か、からかうのは止めてください…!」
「臣くん、恋文送りたい相手いるの!?き、気になる……!」
「いません!話を飛躍させないでください……!」
「ほうほう、なるほど。ではまだいないという事か。今後が楽しみだな」
「もう父上は黙って頂けますかっ」

よもやこんなところで息子の恋愛話に発展するなどとは思わず、凪が食いついた。母にまでずいっと迫られ、ますます困窮を露わにした光臣が更に目元を朱へ染める。更に興が乗ったとばかりに光秀が煽れば、最終的には長男に手厳しい文句を言われた。理由はよく分からないものの、兄にばかり注目が集まっている事へ不服を覚えた幼子が、眉根を寄せながら必死に話へ入ろうとする。

「むっ……あにうえだけずるい!ときもこいぶみ、たべるっ」
「恋文は食べ物ではないかな、鴇くん」
「ん?」

ぷくっと頬を膨らませたままで文句を言う幼子に対し、凪が微笑ましそうに笑って頭を撫でてやる。光鴇にはまだ当分早い恋文に関しては説明する事もなく、光臣は頬や耳朶の赤みをそのままにして、一家は別のコーナーへと移動したのだった。

次いで足を向けたのは、この土産屋に立ち寄る事になったきっかけである、ふわふわ動物なりきりハットのコーナーである。外で見掛けた帽子はパンダ耳であったが、それ以外にも様々な種類や色の帽子が用意されていた。サイズは大人用と子供用でフリーサイズとなっており、多少融通が利く形だ。周囲には他に家族連れの姿もあり、皆それぞれ楽しそうに商品を選んでいる。

「どの耳にするんだ、鴇」
「子供用サイズはこの辺だね。色んな耳があって面白いかも」
「何故獣の耳を被るのかは理解出来かねますが……」
「余興の一種のようなものだろう。そう深く考える事もない」

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