• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



「とき、これほしい!」
「凄く綺麗な色ですね……染め粉でもないのに、ここまで色が出るとは驚きです」
「画材か。義元殿が目にしたら、真っ先に食いつきそうな品だな」
「鴇くんお絵かき好きだもんね。じゃあクレヨンと、あとこっちのスケッチブックも一緒に買おうか」

パンダの顔の形を象ったケースに収められているクレヨンと、大きめのスケッチブックを買い物かごに入れる。商品が入ったそれを凪の手からするりと光秀が受け取り、光臣を見た。

「お前も遠慮せず、何か気になるものがあれば言うといい」
「……では俺はこの筆で」
「ぼーるぺんか、筆先が硬いとあってあちらの紙では心もとない。紙も買っておいた方が後々役に立つだろう」
「じゃあ臣くんもメモ帳と一緒に買いましょう」
「ありがとうございます」

光臣が手にしたのは、木製のボールペンだ。軸などだけでなく、ペン先を出す為のノック部分などもすべて木で出来ているとあってぬくもりを感じる柔らかい色合いである。ちなみに先端部分にはデフォルメされた狐の顔がくっついており、それがアクセントになっていた。念の為、詰替え用インクが五本入ったものと一緒に、掌サイズのリング綴じメモ帳もかごに入れておく。兄が選んだものを目にして、ふと弟がきょとんとした表情を浮かべた。

「あにうえもみっしょ、かく?」
「今のところ、その予定はないな」
「今後も予定あったら駄目だよ、臣くん……」
「ふふ、冗談です」

弟の問いへ面持ちを綻ばせ、光臣が笑った。光秀に似ているだけに、その冗談か本心か見抜き難い様を前にして凪が眉尻を下げる。金色の眸を僅かに眇めて明るい表情を浮かべた少年の、悪戯っぽい返しに光秀の面影を色濃く目にして、若干少年の将来が心配になったのは致し方ない事だ。

「まあそうだな。お前がしたためるべきは密書ではなく、まずは恋文だろう」
「なっ……!!?」
「えっ……!!!?」
「こいぶみってなに?食べれる?」
「ああ、お前にはまだ早すぎるものには違いない」

/ 772ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp