❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
「お土産屋さんの傍に食事処もあるみたいですし、行ってみよっか」
「いく…!おみやげ、たのしみ!」
ちょうど傍には食事処も数軒並んでいるとあって、土産物を見た後でそのまま昼餉を摂る事に決めた一家は早速光鴇のリクエストである、おさるの土産屋へと足を向けたのだった。
おさるの土産屋は名の通り、大店(おおだな)の商家のような外観であった。所々にデフォルメされた猿のマスコットが居て、和風な雰囲気と愛らしさを同時に楽しめる仕様である。暖簾を潜った先には様々な品々がディスプレイされており、買い物を楽しむ人々で賑わいを見せていた。箱、あるいは缶入り菓子や動物のマスコットがついた筆記用具、キーホルダーにマグカップなど、比較的土産物の定番とされるものから、よく分かる動物図鑑、熊の鳴き声目覚まし時計など、動物園ならではの物も数多く取り揃えられている。
店内に足を踏み入れた明智家は、賑わいを見せる色とりどりな品々が所狭しと並べられたそこを、物珍しそうに見回した。会計レジには長蛇の列が出来ており、テーマパーク内での土産物屋の人気ぶりを顕著に表しているかのようだ。
「見事に動物の品々ばかりだな」
「まあ動物園ですから。ぬいぐるみとかお菓子とか、その辺はやっぱりお土産の鉄板ですね」
「ぬいぐるみ……?あの珍妙な人形の事ですか」
見渡す限り、大抵のものが動物をモチーフにしたものばかりである事へ光秀が感心を寄せる。入り口から入ってすぐの場所には熊サブレや虎焼きなどと名称された焼き菓子がずらりと並んでいた。その更に奥の棚には、光鴇程の大きさからそれ以上など、様々なサイズ感のぬいぐるみが陳列されている。
生憎と明智家には女児が居ない為、人形で遊ぶような事はないが、もふもふとした手触りの大きなぬいぐるみはいつの時代も子供心をくすぐるのだろう。光臣がゴリラのぬいぐるみを見て何とも言えない顔をする傍で、父と手を繋いだままの光鴇が眸を輝かせる。