❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
「じゃあ撮るよ。臣くんも鴇くんもこっち向いて。後、としみつさんも!」
「としみつは難しいだろう」
「ふふ、もしかしたら向いてくれるかもですし」
二人の息子に加え、チンチラのとしみつにも声をかける。可笑しそうに光秀がくすりと小さく笑いを零せば、凪がつられるように笑顔を浮かべた。手ブレしないように気を付けつつ、二人と一匹を画面内に収めて彼女が画面をタップする。ピロン、と電子的なシャッター音が響き、満足げな表情を浮かべた。
「鴇くん、これでいつでもとしみつさんの事、思い出せるよ」
「……うん」
まだ幾分消沈した様子であったが、ずっと一緒には居られないという事を察したらしい光鴇が小さく頷いた。そうしてスタッフにとしみつを返して椅子から降りた。
「としみつ、さらば……」
「ここに来てさらばとは……」
「やっぱり挨拶がシュールだね、鴇くん……」
「佐助殿の影響か」
幼子が発するにはあまりに古風過ぎる別れの言葉に、スタッフがぎょっとしているのを見て、光臣が苦笑した。バイバイ、という単語を知らない以上仕方ないが、しんみりの空気がかなり損なわれたのは間違いない。光秀が可笑しそうに小さく肩を揺らす中、小さな手を振ってチンチラ五宿老へ別れを告げた明智家は、次なる小動物達とふれあうべく、別のコーナーへと向かったのだった。
その後、モルモットや犬、兎などと触れ合った一家は最後にしっかり手洗いと消毒をした後、エプロンを返却してふれあい城下町を後にした。城下町を後にする頃には光鴇のご機嫌もすっかり回復し、元々の元気を取り戻していて、虎のしんげんと会えなかった悲しみはだいぶ薄れてくれたようであった。
「ふれあい城下町、楽しかったね」
「はい、犬の種類があんなに沢山あったとは知りませんでした」
「おっきいいぬ、いっぱいいた……!あとけーじもいた!」
「あの人に馴れた犬か。名は体を表すとは本当らしい」