❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
口元が柔らかく笑んでいる様を見る限り、嫌いではないのだろう。触れられているひでみつも嬉しそうであり、所謂ギャップ萌えという現象にあてられた凪がときめく心を抑えられずに眸を輝かせた。
「ひでみつさん、光秀さんに触ってもらえて嬉しそうですね」
「あの男より素直で愛らしい事は確かだ」
「でも、このしゃんってしてるところ、ちょっと似てます」
頭から背にかけて低い温度を孕んだ掌が優しく撫でた。耳をひくひくと動かし、嬉しそうにする小動物は実に愛らしく、ついでに言えばそれを撫でている光秀もまた凪にとっては癒される光景であった。
「はい、それではそろそろお時間です。チンチラちゃん達をお預かりしますね」
「もうおわり?とき、もっとよしよししたい……」
「小さな生き物は人の手に触れられ続けていると疲弊してしまうだろう。としみつを休ませてやるといい」
「うう……」
時間にすればおよそ十分程度の触れ合いだが、他の客達が待っている関係もあって延々とチンチラ達を独占する訳にもいくまい。すっかりとしみつと仲良くなったらしい光鴇が、寂しそうに眉尻を下げた。幼子の手に抱かれているとしみつも心なしか寂しそうに長い髭を垂らしている。光秀が言い聞かせるように告げれば、しゅんとした様で子供が落ち込んだ。それぞれひでみつ、みつただ、しげともをスタッフへ返しつつ、凪が声をかける。
「あの、写真を一枚撮らせてもらってもいいですか?」
「光を直接チンチラちゃんに当てなければ大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。じゃあ鴇くん、臣くん、としみつさんと一緒に写真撮ろっか」
「俺は大丈夫なので、鴇だけで……」
「せっかくだ、お前も写るといい」
許可をもらい、凪が荷物の中からスマホを取り出した。チンチラを抱っこする光鴇の隣に居た光臣が立ち上がろうとするのを光秀が制し、父母が少し距離を取る。そうして二人の息子とチンチラのとしみつを入れ、母が声をかけた。