❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
──────────────…
「ご、五百年後の世だって…!?」
変異性ワームホール(佐助命名)に巻き込まれてしまった光秀達以外、三人の安土武将達を起こした凪達は、ひとまず映り込む景色へ警戒や不信感を露わにしている武将達へ事情を説明した。凪の覚束ない説明を、佐助や光秀が補足する形となったそれを終えた後、一応は事態を呑み込んだらしい秀吉がそれでも驚きを露わにしたのは、まあ当然の反応と言えよう。信じがたいと言わんばかりの秀吉だったが、佐助によって本能寺の石碑を示されてしまえば受け入れる他なく、信長に任されていた政務中であったという彼は困窮した様子で項垂れた。
「よりによって、信長様より頂いた御役目を投げ出し、五百年も時を越えちまうとは…」
「やれやれ、時を越えた事実よりも信長様からの御役目を案じるとは、さすがは優秀な右腕殿、暑苦しい忠義は健在だな」
「おい、暑苦しいは余計だ暑苦しいは。そもそもお前、今日は一体何処に居たんだ」
「凪と共に御殿に居たが、何だ」
「何だじゃねえ、一度城に顔出せって言っただろうが」
「どうせいつもの小言だと見当はついていたからな」
(……それで今日はお城に行かないって言ってたんだ)
いつも通り交わされる光秀と秀吉の応酬を見ていると、ここが一瞬乱世なのではと錯覚してしまいそうになるが、それはただの現実逃避というものだろう。それまで考え込むようにしていた三成が、些か真摯な様子で軽く拳を握った片手を顎へあてがった。
「しかし困った事になりましたね。もうすぐ越後との戦が近いという時に…」
「ぎくり」
「佐助殿、どうかされましたか?」
「いえ、何でもありません」
実はこの面々の中で、佐助が軍神の忍だと認識しているのは、凪は当然として家康、光秀のみであり、三成と秀吉はただの凪の現代人仲間且つ友人だと認識している。凪が五百年後の世からやって来た人間だという事は、様々な事情があった末、安土の武将達全員が知るところとなっている為、それだけが唯一の救いとも言えるだろう。