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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



「最初はどの子にしようか?」
「とき、もふもふってしてるやつがいい!」
「もふもふならこの辺りだろう。随分大きな鼠のようだが……」

ふれあい城下町入場の際、スタッフから渡されたパンフレットへ視線を落とし、光臣が指差す。そこには灰色の柔らかそうな毛並みを持った丸々とした生き物の写真が載っていた。つぶらな眸と長いふさふさの尾に丸い耳、長い髭を持つ生き物の姿を上から覗き見て、光秀が軽く眸を瞬かせる。

「ほう、確かに猫へ対抗出来そうな鼠だな」
「光秀さん、そこ……!?」
「なに、冗談だ」

くす、と笑って光秀が口元を笑ませる。毎度の事だが、この男が言うと本当に冗談には聞こえないのだから驚きである。改めて凪が光臣の手にするパンフレットへ視線を落とすと、彼らの言う大きな鼠の正体を察して笑顔を浮かべた。

「チンチラだ!可愛いっ」
「ちんちらさん?ときもみたい!」
「ほら、大きいだろう?」
「おおきいねずみ……」

まんまるなフォルムと小さな耳と手足が特徴とも言える小動物は、近頃ペットとして流行りらしい。パンフレットに記載されている簡易的な説明を目にして思わず声を上げると、父と手を繋ぎながら光鴇が軽く跳ねた。兄が弟にも見えるようにパンフレットを差し出してやれば、そこに載っている動物に光鴇が何とも言えぬ表情を浮かべる。どうにも乱世育ちの父子にはチンチラは大きな鼠として認識されるらしい。

「多分鴇くん好みのもふもふだと思うよ。触ってみる?」
「ねずみ、かじる?」
「お前に何かある前に俺が助ける。心配する事はない」
「じゃあとき、さわる」

心配そうに眉尻を下げた光鴇が父を見上げた。そうすれば大きな掌でぽん、と幼子の頭を撫でやり光秀が穏やかな声をかける。父の言葉で決心がついたらしい幼子が大きく頷き、早速明智家はチンチラが居る柵の方へと向かった。現代では流行りの動物とあって、チンチラコーナーは思いのほか盛況な様子だ。

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