• テキストサイズ

❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



満場一致となり、早速ふれあい城下町へと親子が足を踏み入れた。先程までぶすくれていた様は何処へやら、ご機嫌な様子で光鴇が頬を綻ばせる。父と繋いだ手を軽く揺らし、とん、とん、と跳ねて喜ぶ子供の様子を見て光秀が柔らかく目元を眇めた。

「では今の内に俺がお前を撫でておくとしよう」
「あにうえのあたまも、よしよしってして?」
「お、俺はいいです……!」
「なに、遠慮するな」

空いた片手で幼子の頭を撫でると、いっそう機嫌が回復した光鴇が兄も撫でるようにと光秀に言う。人前で頭を撫でられる年頃ではない、と恥ずかしそうに目を瞠り、すぐ様首を左右に振った光臣だが、父の意地悪な眼差しから容易に逃れられる筈もない。光鴇を撫でた手をそのまま兄へと伸ばし、くしゃりと自身によく似た銀糸を軽く乱した。

「わっ……!?ち、父上…!」

(光秀さんって何だかんだ臣くんの事からかうのも好きだよね)

頓狂な声を上げて恥ずかしそうに抗議の声を上げる光臣が、両手で乱された髪を軽く直す。父子のやり取りを微笑ましい気持ちで見ていた凪の頭が、不意に大きな掌によって優しくひと撫でされた。

「!!?」
「お前だけ撫でないのは不公平だろう?」
「も、もう光秀さん…!」

完全に不意打ちを食らい、凪が虚を衝かれた様子で目を丸くする。くす、と何処となく色気の滲む笑みを零した光秀を見て、むっと眉根を寄せた彼女が困りきった様子で声を上げた。可笑しそうに軽く肩を揺らした男が凪を宥めるように、そのままするりと頬を指の背で撫でた後、親子は受付へと向かったのだった。



ふれあい城下町内は主に子供連れの家族で賑わいを見せていた。町娘や商人の格好をしている男女の飼育スタッフ達が複数人居て、動物とのふれあい方や生態などの説明をしてくれている。木製の柵で区分けされている中に数種類ずつの動物が居て、好きなところへ立ち入って良いと受付の際、予めスタッフから説明を受けていた。動物に触れるという事で、最初に全員手洗いと消毒を済ませた後、早速目当ての動物の元へと向かう。

/ 772ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp