❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
現在安土へ滞在している政宗の御殿へ、乱世に戻ってから早々訪ねる事になりそうだと察した光秀が微かに肩を揺らした。光鴇の機嫌がようやく回復し始めた頃、凪は通りがけに見掛けた看板を目にして立ち止まる。書かれている内容を確認すると、はっとした様子で光秀達へ振り返った。
「光秀さん、ここ寄っていきませんか?」
「……ん?」
隣に並ぶ彼女へ視線を落とし、光秀が短い相槌を打つ。かっちりした和風の外観というよりは、どちらかと言えば庶民的な雰囲気を思わせるセットが並ぶそこには、看板に達筆な文字で【ふれあい城下町】と書かれていた。入り口付近に設置されている案内板曰く、小動物達と直接触れ合う事が出来る場らしい。
(どう考えても照月以外の虎に触るのは無理だけど、小動物とかなら大丈夫だよね。鴇くんも元気出してくれそうだし、臣くんも興味持ってくれそう…!)
楽しみにしていた虎が見れなかった代わりに、少しでも幼子の機嫌が直ればと思っての誘いであった。光臣も何だかんだ小さな動物は嫌いではない筈だ。小動物と一概に言ってもどんな種類と触れ合えるのかは定かではないが、見るだけでなく実際に触らせてやりたい。
「ここで小動物が実際に触れるみたいなんです。せっかくだから珍しい動物と触れ合わせたいなって」
「ほう、人と接する事が出来るならば危険な動物ではないんだろう。鴇のご機嫌も直りそうだな」
「はい、臣くん鴇くん、寄って行く?」
凪の考えを耳にし、光秀が入り口付近から中へ視線を向けた。小動物が飛び出さないように配慮してか、目の細やかなネットと腰程までの高さの柵などで囲われたふれあい城下町内には、光鴇くらいの子供達の姿も多く見られる。子らが触れられるならば危険ではないのだろう、と判断した男が同意を示し、頷いた。母の問いかけを受けると、実際に動物へ触れられるという事実に息子達の眸が心なしか輝く。
「とき、ちいさいどうぶつ、さわりたい!」
「俺も賛成です」
「じゃあ、行こっか」
「とき、いっぱいよしよしするね!」