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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



ペンギン社会の中にも色々あるのだろう、と凪が考えていると、突如後方からやって来たまさむねより一回り小さなペンギンが隊列を乱して先頭へ躍り出た。

「後方から誰かが追い上げて来たらしい」
「まさむねさんに喧嘩を挑んでいるように見えますね」
「けんかしちゃ、めっ!まさむね、わるいこ!」
「どちらかと言えば、まさむねはけしかけられている方だが」
「あの子の名前はなんていうんだろ……?」

後方からやって来た少々小柄なペンギンは先頭の政宗にくちばしを使って威嚇し、その座を奪おうとしている……ように人間には見える。実際には違うのだろうが、下手に人の名を付けられている為、先入観からそう見えてしまうのかもしれない。凪が首を傾げてぼやくと、飼育員の女性が喧嘩を始めた二羽の仲裁に入った。傍から見ると微笑ましいやり取りに違いないが、万が一ペンギン同士で怪我をしては問題である。

「こら、いえやす!まさむねに絡まないの…!」

飼育員が嗜めるように告げたそれに面々が目を瞠り、光臣が苦笑と共にぽつりと零した。

「あのけしかけたぺんぎん、いえやすさんでしたか……」
「ぺんぎんの家康も負けん気は強いようだな」
「いえやす、まさむねとけんかしちゃ、めっ!わるいこ!」
「大方先頭をまさむねが歩いているのが気に食わなかったんだろう」
「父上……やはり何処か悪意があるのは気の所為でしょうか?」
「おやおや、事実無根というやつだぞ、臣」

飼育員が仲裁に入ったお陰で事なきを得たが、未だにまさむねといえやすは睨み合っている。乱世では政宗が家康をからかう事が常であり、それに対して家康はいつも至極面倒臭そうに溜息を零していたが、こちらのまさむねといえやすは少々関係性が異なるらしい。ふわふわした黄色の飾り羽が家康の猫っ毛を思い出させ、凪がふとくすりと笑いを零した。

(あの黄色い羽、可愛いなあ。写真撮っておこう)

凪がスマホをバッグから取り出し、カメラを起動させた。

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