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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



(本当に武将の名前がついてるなんて……でも確かにカワウソのみつなりくんはつぶらな目で可愛かったなあ。後で写真見せてあげよう)

未知の動物という事であれば、家康や三成あたりは特に関心を寄せてくれる事だろう。しっかりスマホで子供達が象に林檎をやっている場面や、カワウソを観ながら眸を輝かせている場面、カンガルーがサンドバッグに喧嘩を売っている場面などを写真に収めている為、向こうに帰ったら見せてあげようと凪が面持ちを綻ばせた。ただ道を歩いているだけでも楽しい園内に、息子達は終始笑顔である。明るい表情を浮かべている妻子の姿を目にし、光秀もまた眩しそうに眸を眇めたのだった。

「次はどのコーナーかな……?」
「前に人だかりが出来ているようだ。催しか何かがあるのかもしれないな」
「なにかある?とき、みたい!」
「じゃあ行ってみましょう」

凪が右側の通路へ意識を取られていると、正面辺りに人だかりが出来ている様を目にした光秀が声をかける。前日の飴細工の実演販売のように、何かしらの催しがあると察した父の言葉を受けて光鴇がとんと地面を跳ねた。どの道進行方向という事もあり、凪の声がけによって一家は人だかりの中へと紛れる事にしたのだった。

数十人は居るだろう人だかりの中に入り、凪達は人の層が薄い箇所へと移動した。最前列とはいかない為、光鴇が必死に背伸びして前を見ようとするも小さな背ではそれも叶わず、むっと眉根を寄せて父のロングカーディガンの裾を引っ張った。

「ちちうえ、だっこ」
「おいで」

乞われるがままに光鴇を抱き上げて片腕の上に乗せてやる。肩にトートバッグをかけている光秀を気遣い、凪が声をかけた。

「光秀さん、荷物持ちますよ?」
「いや、この程度ならば問題ない」
「そうですか……?もし抱っこし難いようだったら遠慮なく言ってくださいね」
「ああ、ありがとう」

あくまでも荷物を凪に持たせようとしないところが、実に光秀らしいと言うべきか。

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