❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
「ふふ、ご飯食べられるなら平気そうだね」
「動物はそういうところが凄いです」
「ひでよし、ねんねしてひるげたべちゃ、めっ!わるいこ!」
「あちらに帰ってからの楽しみがひとつ増えたな」
思い思いの感想を零し、食事に勤しむひでよしを見守る。やがて満足した息子達の様子を見て、明智家は次なる動物が居る場所へと向かったのだった。
パンダ御殿を後にした明智家は、虎の古戦場と呼ばれるコーナーへ向かう道すがらにある場所を色々と観て回った。象の櫓(やぐら)やカワウソ湯屋、カンガルー本丸など和風と動物が見事にマッチしたコンセプトのコーナーは中々に見応えがあり、大人から子供、あるいは動物好きだけでなく歴史好きでも楽しめる仕様となっている。
象を初めて目にした父子はさすがにその大きさに驚いたらしく、光秀も目を瞠っていた事が印象的であった。ちょうど象のただかつに林檎を手ずから渡す体験を行っているところへ居合わせた為、光臣と光鴇がそれぞれただかつへの餌やり体験を行う事が出来たのである。鼻先で器用に林檎を受け取った象に息子二人が感動している様は実に心和む光景であり、凪と光秀は互いに顔を見合わせて笑い合ったのだった。
「ただかつもみつなりもゆきむらもかわいかったね……!」
「ただかつさんの大きさには驚きました。あとゆきむらさんは何だかとても強そうでしたね。みつなりさんは可愛かったです」
ちなみにみつなりがカワウソで、カンガルーがゆきむらである。パンダの名がひでよしであった事から、もしやと予感を抱いていた凪であったが、見事にそれは的中したのだった。この動物園内で飼育されている数多の動物達には、外観や内装が和風コンセプトという事もあってすべてに戦国武将の名が付けられている。
名はそれぞれ飼育コーナーの傍に設置されている看板に動物の説明などと共に記されており、乱世で見知った面々の名が出て来る度、主に光秀が可笑しそうに肩を揺らして笑っている事から、彼だけまったく別の楽しみ方をしているという事実が窺い知れる。