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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



正門付近に居る凪達に対し、虎のコーナーは割りと園の最奥部にある為、そこに至るまでの道すがらに居る動物を見ようという事で話が大まかまとまった。

「じゃあ光秀さんの言う通り、照月が居る方向を目指して進んで行きましょう。臣くんも気になる動物が居たら言ってね?」
「はい……というより、どの動物もこの絵を見る限り未知の生き物ばかりなので、どれでも見応えがありそうです」

光鴇の隣で看板を不思議そうに眺めていた光臣が、凪の声がけに頷く。一部見知った動物の姿もあるが、ほとんどが未知の生き物だ。書物ですら目にした事のないそれ等へ仄かな期待を抱いているらしい光臣は、乱世で見る大人びた雰囲気とは異なり、年相応の幼さを覗かせている。

(乱世は乱世である意味野生の動物も沢山いるけど、ライオンとかパンダとか……そういう動物園ではお馴染みの生き物とは縁がないもんね。鴇くんのリクエストだったけど、臣くんも楽しめそうで良かった。光秀さんはどうだろう……?)

光臣はどちらかと言えば、光秀の誕生祝いの贈り物を作りたいという希望を優先させてくれていた。本当は他にも興味のある場所があったのではないか、と密かに懸念していたのだ。この動物園は光鴇が行きたいと言ったものだが、光臣自身も興味があるらしい事へ内心安堵し、凪が胸を撫で下ろす。そうしてふと光秀の方をちらりと見上げた。程なくして彼女のそれと、金色の眸と眼差しが絡み合う。

「どうした、凪」

(光秀さんは家族と過ごせればそれでいいって言ってくれてたけど……この動物園も良い旅行の思い出になればいいな)

光秀の誕生日が少しでも彼の記憶に彩りを添えてくれるようにと願いながら、凪が緩く首を振る。その表情は柔らかな笑顔に満ちていて、不安の影などない。凪を、そして息子達を常に笑顔で居させたい。そう考えている光秀にとって、こうして現代で過ごす日々は懸念とは無縁のひとときだ。

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