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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



当然のようにひょいと持たれてしまった為、自分の荷物だけになった彼女が申し訳なさそうに隣の男を見ると、光秀が自然と傍にあった凪の手を取り、そっと絡める。

「気にするな。お前が手にするべきはこれだろう」
「う……またそうやってずるい事言う」
「ちちうえとははうえ、おててつないでずるい!ときも!」

あまりにも自然な所作に彼女が反論の術を失っていると、二人が手を繋いでいる様を目にした光鴇がむっと眉根を寄せた。ちなみに幼子は兄と手を繋いでいたのだが、そのままの状態で空いていた反対の手を凪の片手と繋ぎ、満足気に笑う。

「みんなでおててつないで、なかよし!」
「さすがに一列で手を繋ぐのは恥ずかしいんだが……」
「ではお前はこちらで繋ぐか?臣」
「それじゃ意味一緒ですよ……」

端から光秀、凪、光鴇、光臣の並びで横一列になり、親子仲良く手を繋いでいる図は傍から見ても微笑ましい。弟と手を繋ぐのはさておき、家族でまるっと手を繋いでいる現状に気恥ずかしさを覚えた光臣が眉尻を下げた。冗談めかした調子で空いた右手を持ち上げ、ひらりと振って見せた父に対して肩を落とすも、少年がそれを解く様子はない。

正門を入って程なく、メインストリートへ差し掛かろうとする途中で、園内マップの大きな看板が出ている事に凪が気付く。一応チケット購入の際にパンフレットも貰ったが、両手がそれぞれ塞がっている為、看板を確認する事にした。

「今居るのがこの赤い印のところだよ。最初にどの動物見に行こうか?」
「しょーげつ!」
「虎は現在地から見て奥まった場所に居るようだ。その方向へ向かうとなると、中央の通りを右手に曲がった方が良さそうだな」

光鴇が意気揚々と応えた事に対し、凪が思わず面持ちを綻ばせた。マップは園内を簡略化して描かれており、どこにどんな動物が居るのかがデフォルメされたイラストで載っている為、文字が読めずとも判別可能であった。つぶらな眸の虎が描かれている箇所を視線で辿った光秀が、現在地と見比べる。

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