❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
柄や色は異なるものの、兄弟揃ってパーカースタイルというのもまた愛らしさを惹き立てていた。子供に対する着せ替えの楽しさに目覚めそうな凪が親馬鹿を発揮している中、視線をその更に横へとずらした先に、すらりとした長い脚が見えていっそう眸を丸くする。
黒いVネックのカットソーと黒い細身のパンツ、白のロングカーディガンを羽織っている光秀の装いはシンプル目な印象が際立つが、元々の容姿も相俟ってそれが却ってシックに決まっていた。普段は袴で隠されている長い脚のラインが露わになっている様が実に色めいていて、腰回りが細い割りに均整の取れた体躯を持っている事から、さながらモデル並みの着こなしである。
(格好いい………)
かれこれ現代の洋服をまとっている姿を目にするのはこれで数度目だが、いずれも季節が違った。初秋の装いも凪の胸をときめかせるには十分過ぎる。あいも変わらず美麗な夫の姿に頬を淡く上気させると、男がくす、と鈴を転がすような笑みを乗せた。
「お気に召さなかったか?」
「そんな事ないです……!その、格好いいです……」
「お前がせっかく選んでくれたものだ。上手く着こなせて何よりだな」
首を緩く傾げた拍子、銀糸がさらりと揺れる。悪戯な色を帯びている男のそれを目にして、凪が慌てて首を左右に振った。普段はあまり口にしない言葉まで咄嗟に飛び出てしまう程、目の前に居る夫は現代の装いに何ら違和感なく馴染んでいる。彼女の返答を耳にして笑みを零し、光秀が片手を伸ばして凪を隣へといざなった。ソファーに座るとニットワンピースの裾が当然ながら軽く上がる。そこから覗く真白の大腿を目にし、男が僅かに柳眉を寄せた。
「光秀さん……?どうかしました?」
「いや、出掛ける際に髪を下ろしているのが少々新鮮だと思っただけだ」
「ヘアアイロン……えーと髪を巻く絡繰りがあったので、せっかくだから使ってみました」
「こうして触れやすいのは悪くない」