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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



いやらしい娘にしたのは誰なのか。そんな事を口にしようものならば、別の角度から攻められる事請け合いな為、藪蛇とならぬよう逃げの一手を選んだ彼女が背を向ける。ぱたぱたとその場から居なくなった凪の後ろ姿が、扉に閉ざされて見えなくなったのを見届けた男は、ゆるりと肩を竦めて着物ヘ手をかけたのだった。




光秀がシャワーを浴びている間、凪は陽が昇る京都の町並みを最上階から眺めていた。建築物の高さを制限されている京都市内の中において、彼方が所有するこのホテルは少々群を抜いてる。二十五階という階数の割に高さを出さず、部屋数を多くする工夫が凝らされているこのホテルの最上階から眺める町並みは見事なものであり、町を一望出来る様は安土城の天主から望む城下町を思い起こさせた。まったく町並みは異なる筈であるのに、現代の中において昔ながらの空気感を色濃く残す様がそう連想させるのだろうか。今頃向こうは大パニックだろうなと苦笑した凪は、背後でかちゃりと扉が開かれた音に気付き、身を翻した。

「お帰りなさい、シャンプーとか大丈夫でした……か……」
「水浴びと勝手が違う所為で少々手間取りはしたが、問題はない。お前も入って早く汗を流してくるといい」

声をかけた凪が不自然に言葉を切る。そんな彼女に向かって近付きながら言葉をかけて来た光秀は、凪にもシャワーを済ませる事を勧めた。しかし、凪の反応がない事に気付いた彼が双眼を瞬かせて、やがて仄かに怪訝な面持ちを浮かべる。首を傾げた拍子、濡れた銀色の毛先からぽたりと小さな雫が白地に紺色の模様が描かれた浴衣と、肩へ羽織っている紺色の羽織へと落ちた。

(な、なんかやらしいっ……!!)

やらしい、とは完全に凪の主観であるが、シャワー上がりの光秀の姿は、乱世で割と見慣れた湯浴み上がりよりも何となく色気が倍増していた。温度が一定に保たれる為、しっかりと汗を流したのだろう白い肌がほんのりと上気し、しっとりと濡れた髪からは雫が時折滴る。

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