❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
ちなみに、光鴇は未だに画面の中で流れている、様々な動物が戦国武将の名を冠している謎アニメに夢中だ。【おだのぶにゃが】と名乗る織田木瓜の家紋が掘られた甲冑を来た黒猫が、【あけちみちゅひで】と呼ばれる水色桔梗を掲げた白狐の元へ颯爽と助けに現れたシーンに、いたく興奮している模様である。
「あの、変かな……?」
ある意味、あまり思わしくない反応をしている二人に向かって、凪が遠慮がちにおずおずと問いかけた。自身の格好を改めて見下ろしている彼女へ、すぐ様はっとした様子で眸を瞬かせた光臣が首を左右へ振る。
「そんな事はありません……!ただその、他のおなご達と同じように脚を出されていたので、少々驚いたと言いますか……」
「よく似合っている。他の男にその姿を見せるのが、少々惜しいと思っただけだ」
五百年後の住人達が女性でも脚を露出する事が普通だという認識は、昨日で十分培われた光臣であったが、乱世で過ごしている凪がそうするとは思っていなかったのだろう。気恥ずかしそうな表情でぼそぼそと告げる。その少年の横では、光秀が口元へ微笑を乗せて恥ずかしげも無く言い放った。冗談めかした調子に聞こえさせているようだがその実、紛れも無い本心だというのは本人のみぞ知る事である。
(良かった、変じゃないみたい……)
内心小さく溜息を漏らし、胸を撫で下ろした凪が肩の力を抜いた。凪の本日の格好はライトグレーのケーブル編みニットワンピースに、黒の秋用薄手デニールタイツだ。ニットワンピースはオフショルダーであり、袖口と腰がレースアップになっている。膝よりやや上の丈という事で、光臣と光秀がああいった反応を示したという訳だ。
いつもはハーフアップなどにしている髪も今日はすべて下ろし、アイロンでミックス巻きにしている為、印象が普段とは少々異なる。久々に現代の化粧品を用いたとあって、大きな黒々した猫目が更に強調され、くるんとカーブした長い睫毛と、涙袋に入れたハイライトが眸を魅力的に見せていた。