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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第5章 掌中の珠 後編



いまいちテレビの仕組みを分かっていない幼子は、昨夜観た番組が未だに続いていると思っているらしい。今度こそお気に入りの光忠が出てくる筈、と息巻いた様を微笑ましそうに見送った後、凪は改めて気合いを入れた。

「光秀さん達を待たせないよう、私も早く支度しなくちゃ」

女性の支度は男性よりも通常時間がかかると相場が決まっている。久々に現代の衣服を着るとあって、凪自身も密やかに楽しみにしていたのだ。幸いホテルにはヘアアイロンなどの一式も用意がある上、化粧品は洋服と共にデパートで購入済である。久々に現代コスメを使える機会なのだから、時間が許される範囲で楽しみたい。

「まずはメイクからかな」

そう一人呟きを零し、浮足立つ心を抑えきれぬまま、彼女は早速コスメ一式を持って寝室の隣に備え付けられていたメイクルームへと向かったのだった。



それから三十分後、出来るだけ急ぎで化粧とヘアメイク、着替えを終えた凪がメイクルームから出て光鴇が待っているソファーがある一室へと向かう。扉を開けた先にはテレビで流れている見知らぬアニメへ釘付け状態の光鴇と、そしてその隣に居る光臣の姿があった。光鴇を真ん中に挟む形で光秀も座っており、画面から意識を逸らして二人が凪を振り返る。彼女の格好を目にした瞬間、父子揃って全く真逆の反応を示した。

「なっ……!?母上、そのように御足(おみあし)を出されるなど…!」
「これはこれは……」

(や、やっぱりちょっと駄目だった……!!?)

父とよく似ている金色の眸を瞠り、白い肌を淡く染めた光臣が衝撃の入り乱れた声を上げる。光秀もまた、微かに双眸を見開いた状態で、感心とも何ともつかぬ調子のそれを零していた。二人の反応を前にした凪はといえば、さすがに駄目だったかと内心反省しつつ、眉尻を下げて困ったように笑う。かれこれ十年以上ぶりに袖を通す現代の衣服という事で、うっかり自分の好みのものを選び過ぎたかと肩を竦めた。

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