❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第5章 掌中の珠 後編
傍でぎゅっと抱きついている幼子の頭を光秀が撫でているのを見た後、凪が改まって光臣へも向き直る。
「じゃあ早速支度して、動物園出かけよっか!」
「わーい!しょーげつ、たのしみ!」
「では顔を洗って身支度を整えなければなりませんね」
凪の声がけに光鴇が嬉しそうな表情を浮かべた。パンフレットで目にした虎をすっかり照月だと思い込んでいる様子に微笑ましいものを感じ、光秀が口元を綻ばせる。光臣が頷き、凪がベッドからもふもふのスリッパを履いて降りた。クローゼットを開けて、昨日買った衣服を取り出すと支度に取り掛かるべく、それぞれがおもむろに動き始めたのだった。
洗顔や歯磨きなどを済ませた後、凪は自身の支度に入る前に肌の保湿などだけを手早く終わらせ、先に光鴇の着替えを手伝っていた。ちなみに光秀と光臣は昨夜子供達が使った部屋の方で着替えている。光秀が現代の衣服の着方を知っている為、兄は任せて大丈夫だろうという判断だ。
「とき、たび、じぶんではける」
「これは足袋じゃなくて、靴下っていうんだよ。まあ同じようなものだけどね」
「くつした、はける。きつねさん」
下ろしたての靴下は足の甲部分に白い狐の顔が描かれていて、踵部分には後ろ姿と尻尾が見える形となっていた。光鴇本人に選ばせたところ、これがいいと自分で持って来たものがそれだった為、狐の顔の靴下を購入したという訳だ。少々覚束ないながらもベッドの端に座って靴下を穿いた幼子の足元へ屈み込み、凪が靴下の踵の位置を直してやった。
両足に白い狐の姿があるのを見て、機嫌良さそうに笑っている光鴇の着流しを脱がせると、早速白地に紺色の細めのストライプが入ったデニム生地のテーパードパンツを穿かせてやる。トップスはフード部分が薄めのグレーになっているゆったりめの黒パーカーだ。シンプルなアップリケのロゴが可愛らしい。パンツにはアクセントとして黒のサスペンダーをつけ、わざとかけずに垂らしておく。